東京ビッグサイトを、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催中と準備・撤去期間を合わせた約20カ月、報道機関向けのメディアセンターとして使用する計画が進んでいます。東京ビッグサイトでは年間300以上の展示会が開催されており、これらの展示会で事業を成り立たせる企業も少なくありません。

主催会社やディスプレイ施工会社、また、展示会を商談の場としている中小企業や、コミックマーケット(コミケ)を支える協力企業が計画変更を求める声を上げ続けています。しかし、ビッグサイトを実質的に所管する東京都や、都と共にオリンピックの施設利用計画を立てるオリンピック組織委員会は、計画変更に応じるそぶりを見せません。

五輪準備に使える残り時間が少なくなる中、今更この問題が騒がれることに戸惑う人は多いでしょう。ここまで議論がもつれた要因は大きく2つあります。1つは、このままでは倒産の危機に瀕する展示会に関わる企業の要求に対して、東京都の対応が極めて限定的であること、もう一つは、展示会に関わる企業の大半が中小企業だったために、声が拾われにくかったことです。

これまでに国際イベントニュースに掲載した記事を中心に、「五輪ビックサイト問題」の全体像を解説します。

 

 

ビッグサイトが使用できなくなる期間

オリンピックに向けたビッグサイトの改修工事は、すでに始まっています。工事のために閉鎖された施設もあれば、新たに増設されたものもあります。問題となっているのは、全体の4割が使用できなくなる2020年5月以降、さらに全面使用不可となる6〜9月です。

ビッグサイト会場問題 「半歩前進 2カ月短縮」 

 

ビッグサイト以外の施設を使えばいいと考える人は多いでしょう。しかし、代替施設となるはずの幕張メッセも、オリンピック会場として使われることが決まっています。

 

五輪利用6カ月か

また、パシフィコ横浜は敷地面積がビッグサイトの4分の1程度しかなく、代わりにはなり得ません。

 

なぜ、ビッグサイトをオリンピック施設として使用することに

抗議する人がいるのか

 

東京ビッグサイトでは、年間300以上のイベントが開催されています。モーターショーやゲームショーのように広く一般の人が参加する見本市や、コミックマーケットなどが有名ですが、それらはごく一部のもので、一番数が多いのは、企業と企業を結ぶために業界・業種ごとに開かれる展示会と呼ばれるものです。展示会に出展する企業には、特殊な商品や技術を売る中小企業が多く、日本にしかない技術を探しに海外から参加する人も少なくありません。そこに集まる人たちにとって、展示会は年に限られた日にだけ開かれる、自分たちの業界の「市場」なのです。

 

「一年間休止など考えられない」~五輪の影~

五輪開催に合わせた商品開発~シリーズ五輪の影~

小池都知事は知っているのか~シリーズ五輪の影③~

 

また、展示会に関わる仕事も多岐に渡ります。展示会の主催業務、出展ブースのディスプレイデザイン・施工、電気工事、あるいは、コミケで販売される自主制作コミックを印刷する企業もあります。

 

ビッグサイト問題への警戒強まる

一言、謝ってほしい~シリーズ五輪の影①~

コミケ来場者55万人の行方は ~シリーズ五輪の影~

 

施設利用計画の決定権者は今も見えぬまま

次に考えなければならないのは、オリンピックのために使う施設について、計画を決定するのは誰か、ということです。決定権は東京都とオリンピック組織委員会の手に委ねられていますが、双方の責任範疇を決める線引きは取材を続けている我々にもよくわかりません。

 

食い違う2者の主張

 

さらに、東京都は、ビッグサイトの代替施設として用意する仮設展示場について、昨年12月、設置期間を20年11月まで延長するという発表をしましたが、今月頭になって「設置期間は延長するが利用できる保証はしていない」と担当課長が発言し、20年4〜10月、ビッグサイト関連の施設を民間が利用できる可能性はほとんどないという見解を示しました。このような経緯の中で、業界は都に対する信頼を無くし、この状況を知った人たちから見直しを求める署名が1週間だけで約6万件集まりました。オリンピック組織委員会においては、「対応窓口は都」という回答を今も続けています。

 

展 示 面 積 ゼ ロ の 危 機

業界反発「話が違う」

反対署名 14万4000件へ

 

これまで、小池都知事は業界団体が提出した署名の受け取りに際しても、担当課長に対応させるなど、ビッグサイト問題と関わりを持ったことがありません。(その後、4月29日に幕張メッセで開催された「ニコニコ超会議」の中で「仮設で対応します」とコメントしました。しかし、実態を理解したうえでの回答なのか、疑問が残ります)

 

超党派の国会議員が所属する展示会議連で幹事長を務める公明党の漆原良夫中央幹事会会長は、業界団体に対してもっと声を上げるよう要請し、公明党として都議会でもバックアップを辞さないと述べています。

 

お願いする話じゃない ~シリーズ五輪の影~

ビッグサイトは、展示会を商談の場としている企業にとって売り手と買い手が出会う「市場」そのものです。機能としては、食品業界における築地市場となんら変わりません。今行われようとしているのは、市場を潰そうとしている話なのです。

 

日本の産業に大打撃を与えるこの話がこれまで振り向かれなかったのは、関わる企業の大半が中小だったからでしょう。彼らの声よりも優先されてきたことがあったのかもしれません。声に耳を傾けて、実際に動くことができるのは小池都知事や都議会、そして彼らを動かす都民の他にいないでしょう。7月の都議選に向けて、ビッグサイト問題を本紙では継続して報道して参ります。

 

 

 


国際イベントニュース 編集長 東島淳一郎国際イベントニュース編集長 東島淳一郎

2009年全国賃貸住宅新聞社入社。劇団主宰者から銀行勤務を経て30歳で記者に転身。7年間の記者生活を不動産市場で過ごす。2016年9月、本紙創刊とともに現職。


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国際イベントニュース 編集部 長谷川遼平

2012年入社。賃貸住宅に関する経営情報紙『週刊全国賃貸住宅新聞』編集部主任。起業・独立の専門誌『ビジネスチャンス』にて新市場・ベンチャー企業を担当。民泊やIoTなど、新産業を専門に取材中。

 

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