2020年、東京ビッグサイトが五輪会場になると何が問題なのか?
- 2018/6/27
- 小池百合子東京都知事, 東京オリンピック・パラリンピック, 東京ビッグサイト会場問題, 東京ビッグサイト(東京国際展示場)
【この記事の内容】
1.五輪ビックサイト問題とは?
2.ビックサイトが使用できない期間
3.なぜ、ビッグサイトをオリンピック施設として使用することに抗議する人がいるのか
4.施設利用計画の決定権者は今も見えぬまま
5.高まる反発 小池都知事はどうする?
6.デモが止まらない
7.東京都は使用制限期間の短縮を発表(2018年6月追記)
8.五輪延期、新型コロナウイルス感染拡大による更なる使用制限も(2021年7月追記)
9.急激に変化するイベント・展示会をとりまく環境(2021年7月追記)
■ビックサイトってどんな場所?
1.五輪ビッグサイト問題とは?
■2020年の東京五輪に伴い、イベントや展示会でフル稼働のビッグサイトが報道機関向けのメディアセンターとして20ヵ月の利用制限される
■その間に開催される展示会やイベントが縮小か中止になり、経済的にも大損失
■代替え候補の施設や会場等もなかなか決まらず首都圏でビックサイトの次に大きい幕張メッセでもイベントや展示会主催者が手を焼いている
【補足】幕張メッセでも三競技が行われる事が決定しており、イベントの代替え場所として機能していない
展示会を開催出来ないと誰がどんなふうに困るのか
・展示会ってそもそもどんな事をしている場所なのか?
企業と企業を結ぶために業界・業種ごとに開かれる新製品や技術のお披露目の場が展示会と呼ばれるものです。
展示会に出展する企業には、特殊な商品や技術を売る中小企業が多く、日本にしかない技術を探しに海外から参加する人も少なくありません。そこに集まる人たちにとって、展示会は年に限られた日にだけ開かれる、自分たちの業界の「市場」なのです。一度の展示会で何百社も出展して、何十億という商談が成立することもあります。
東京ビッグサイトでは年間300以上の展示会が開催されており、これらの展示会で事業を成り立たせる企業も少なくないのです。
特に中小企業にとっては、このマーケット(市場)を一気に失う事になるのです。
こんなに大きく問題になった理由とは
要因は2つ↓
①このままでは倒産の危機に瀕する展示会に関わる企業の要求に対して、東京都の対応が極めて限定的であること
②展示会に関わる企業の大半が中小企業だったために、声が拾われにくかったこと
主催会社やディスプレイ施工会社、また、展示会を商談の場としている中小企業や、コミックマーケット(コミケ)を支える協力企業が計画変更を求める声を上げ続けています。しかし、ビッグサイトを実質的に所管する東京都や、都と共にオリンピックの施設利用計画を立てるオリンピック組織委員会は、計画変更に応じるそぶりを見せません。
これまでに国際イベントニュースに掲載した記事を中心に、「五輪ビックサイト問題」の全体像を解説します。
2.ビックサイトが使用できない期間
オリンピックに向けたビッグサイトの改修工事は、すでに始まっています。
工事のために閉鎖された施設もあれば、新たに増設されたものもあります。問題となっているのは、全体の4割が使用できなくなる2020年5月以降、さらに全面使用不可となる6〜9月です。ビッグサイト以外の施設を使えばいいと考える人は多いでしょう。しかし、代替施設となるはずの幕張メッセも、オリンピック会場として使われることが決まっています。また、パシフィコ横浜は敷地面積がビッグサイトの4分の1程度しかなく、代わりにはなり得ません。
3.なぜ、ビッグサイトをオリンピック施設として使用することに抗議する人がいるのか
東京ビッグサイトでは、年間300以上のイベントが開催されています。モーターショーやゲームショーのように広く一般の人が参加する見本市や、コミックマーケットなどが有名ですが、それらはごく一部のもので、一番数が多いのは、企業と企業を結ぶために業界・業種ごとに開かれる展示会と呼ばれるものです。展示会に出展する企業には、特殊な商品や技術を売る中小企業が多く、日本にしかない技術を探しに海外から参加する人も少なくありません。そこに集まる人たちにとって、展示会は年に限られた日にだけ開かれる、自分たちの業界の「市場」なのです。
また、展示会に関わる仕事も多岐に渡ります。展示会の主催業務、出展ブースのディスプレイデザイン・施工、電気工事、あるいは、コミケで販売される自主制作コミックを印刷する企業もあります。
4.施設利用計画の決定権者は今も見えぬまま
次に考えなければならないのは、オリンピックのために使う施設について、計画を決定するのは誰か、ということです。決定権は東京都とオリンピック組織委員会の手に委ねられていますが、双方の責任範疇を決める線引きは取材を続けている我々にもよくわかりません。
さらに、東京都は、ビッグサイトの代替施設として用意する仮設展示場について、昨年12月、設置期間を20年11月まで延長するという発表をしましたが、今月頭になって「設置期間は延長するが利用できる保証はしていない」と担当課長が発言し、20年4〜10月、ビッグサイト関連の施設を民間が利用できる可能性はほとんどないという見解を示しました。このような経緯の中で、業界は都に対する信頼を無くし、この状況を知った人たちから見直しを求める署名が1週間だけで約6万件集まりました。オリンピック組織委員会においては、「対応窓口は都」という回答を今も続けています。
5.高まる反発 小池都知事はどうする?
これまで、小池都知事は業界団体が提出した署名の受け取りに際しても、担当課長に対応させるなど、ビッグサイト問題と関わりを持ったことがありません。(その後、4月29日に幕張メッセで開催された「ニコニコ超会議」の中で「仮設で対応します」とコメントしました。しかし、実態を理解したうえでの回答なのか、疑問が残ります)超党派の国会議員が所属する展示会議連で幹事長を務める公明党の漆原良夫中央幹事会会長は、業界団体に対してもっと声を上げるよう要請し、公明党として都議会でもバックアップを辞さないと述べています。
ビッグサイトは、展示会を商談の場としている企業にとって売り手と買い手が出会う「市場」そのものです。機能としては、食品業界における築地市場となんら変わりません。今行われようとしているのは、市場を潰そうとしている話なのです。日本の産業に大打撃を与えるこの話がこれまで振り向かれなかったのは、関わる企業の大半が中小だったからでしょう。彼らの声よりも優先されてきたことがあったのかもしれません。声に耳を傾けて、実際に動くことができるのは小池都知事や都議会、そして彼らを動かす都民の他にいないでしょう。
6.デモが止まらない
参加した約400人のほとんどが展示会の造作や電気工事、リースなどを行う支援会社の社員や家族です。五輪によるビッグサイトの利用制限が生活の基盤を脅かす問題だと訴えています。
展示会主催・支援会社の8割超がビッグサイトの会場問題に対して「いまだ解決していない」と回答したアンケート結果を公表しています。「解決した」と回答したのは全体の約1%にとどまり、ほとんどの企業が現状の対応策に不満を持っていることがわかっています。
7.東京都は使用制限期間の短縮を発表(2018年6月追記)
東京都は2017年9月28日、五輪・パラリンピックによる2020年の東京ビッグサイトの使用制限期間を短縮することを発表した。これまで使用できないとされてきた5月1~5日の5日間で西・南展示棟が使用できるようになったほか、りんかい線「東京テレポート」駅に建設予定の仮設展示場を7月1~14日と9月10~30日の計35日間にわたって使用できるようになります。
それでも抜本的解決にはなっていないのが現状です。
コミケは合同開催することに決定
8.五輪延期、新型コロナウイルス感染拡大による更なる使用制限も(2021年7月追記)
東京五輪を迎える2020年の1月16日、厚生労働省は国内で初めて新型コロナウィルス感染者を確認したと発表しました。3月には、延期が決定。新型コロナウイルス感染拡大による、新たな会場問題も発生しています。
9.急激に変化するイベント・展示会をとりまく環境(2021年7月追記)
新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛、会場の使用制限、入場制限など様々な制限を受け、『オンライン展示会』やリアルとオンラインを同時開催する『ハイブリッド展示会』が開催されるようになりました。
■東京ビッグサイトってどんな場所?
東京国際展示場(東京ビックサイト)
敷地面積 265,751.63㎡
屋内展示場面積 95,420㎡
├東展示ホール 51,380㎡
├西展示ホール 29,280㎡
└東新展示ホール14,760㎡
屋上展示場 6,000㎡
国際イベントニュース編集長 東島淳一郎
2009年全国賃貸住宅新聞社入社。劇団主宰者から銀行勤務を経て30歳で記者に転身。7年間の記者生活を不動産市場で過ごす。2016年9月、本紙創刊とともに現職。
国際イベントニュース 編集部 長谷川遼平
2012年入社。賃貸住宅に関する経営情報紙『週刊全国賃貸住宅新聞』編集部主任。起業・独立の専門誌『ビジネスチャンス』にて新市場・ベンチャー企業を担当。民泊やIoTなど、新産業を専門に取材中。