新年明けましておめでとうございます。2021年も新型コロナウイルスによりさまざまな変化に見舞われる年となったかと思います。皆さんの中にもこれまでとは違う挑戦を迫られた人もいるのではないかと思いますが、私も1つ、大きな挑戦に挑みました。それは、重慶への進出です。これまで私は中国東部にある上海と東南部にある廈門という2つの拠点で日本商品の販売を行っていたのですが、新たに重慶でも拠点を構えることにしたのです。今回は、そんな重慶での生活によって分かった現地の様子を紹介したいと思います。
重慶は中国の南西部に位置する都市で、上海や厦門とは異なり大陸内部にある地域です。中国南西部の交通拠点として栄えている都市で、人口は約3100万人。北京や上海よりも人口が多くにぎわう都市でありながら、内陸という地理的な要因もあってか住んでいる日本人の数は300人程度しかおらず、日本の商品などはまだまだ少ない地域となっています。また、交通の拠点でありながら自然豊かで鉱物資源も豊富、農業も盛んな地域です。石炭や天然ガスなどが採れる他、ストロンチウムの埋蔵量が世界2位といわれています。
経済面で言えば、上海などの都市と比べて労働コストが低いといわれていますが、生活が苦しいわけではありません。賃金が低い分、生活にかかるコストも低く、ゆとりある生活が過ごせます。例えば家賃です。私の上海の賃貸住宅の家賃は約90平方メートルの部屋で月1万6000元(約29万円)なのですが、重慶では同じ90平方メートルで年間1万6000元となります。重慶の住宅は少し郊外ですが、生活の便に支障はなく、ビジネスをする上では申し分のない場所なのですが、上海の12分の1の家賃ということになります。こうした金額の違いはさまざまな場面で出てきます。先日、差し歯が折れてしまうアクシデントに見舞われ、上海の歯医者を訪れたところ、治療費は3000元(約5万4500円)と言われました。その時は治療をやめて、後日になって重慶の歯医者を訪れたところ、同じ治療内容で700元(約1万2700円)と言われました。中国生活が長い私ですが「こんなにも違うのか」と改めて驚かされました。もちろん、生活コストは安いですが、お金に対する考え方の違いはあります。上海の人は都会的で生活水準も高く、日本から来た日本人もまるで日本での生活と変わらないような豊かな生活を過ごしています。一方で重慶の人は、生活に豊りはあるものの価格に対して非常にシビアで、特に小売りに対しては価格を何より重視する傾向にあります。
また、食事も他の都市と大きく違います。重慶といえば「火鍋」が有名です。唐辛子の辛味に加え、口の中がピリピリとする山椒もよく使われます。こうした食文化は中国では「麻辛」と言われており、私のように他の地域から来た人からすると何を食べても同じような辛味ばかり感じる味に思えるのです。ただ、そうした食文化にも理由がありました。重慶という地域は山が多く、世界有数の河川である長江が流れていることから、乾燥期が長い地域となっています。こうした地域にすんでいると、他の地域に比べて発汗することがあまりないのです。そこで生まれたのが、重慶の辛い食文化なのだそうです。辛いものを食べて発汗することで、体内の水分を発散する。こうした由来を聞くと、ピリピリした味覚が苦手な私でも食を通して重慶という地が身に染みていくように感じます。
重慶に拠点を持ってしばらく経ちましたが、現地の小売店の経営者からは「重慶に必要な日本商品が手に入らない」という話をよく聞きます。中国は広い国で、地域によってまったく別の顔があるというのは分かっていたつもりですが、新鮮な発見と巡り合うことができました。長い歴史と広大な土地を持つ中国に、今年もぜひ注目してみてください。