ITサービスが生活を支える中国の日常
私は中国がIT先進国であると自負しています。日本でもさまざまなITを駆使したサービスが浸透していますが、中国では日常生活にITが溶け込み、必要不可欠のものとなっています。今回は、そんなITサービスが浸透した中国での日常を紹介したいと思います。
まずは朝食です。中国は早起きの人が多く、6時くらいには近所の公園が運動する高齢者などでにぎわいはじめます。運動の後はそのまま市場やお店を訪れ、朝食を購入します。ここでの決済は現金ではなく、スマホを使った電子マネー。日本でも電子決済サービスが広く普及していますが、今でも現金を使う人が多いと聞きます。中国ではその逆で、ほとんどの人が電子マネーを使っています。
現在の中国では現金での支払いに対応する店舗が非常に少なくなってきました。よほどの地方に行かない限り、電子マネーがないと買い物も交通機関も利用できません。先日も日本から赴任したばかりの日本人駐在員がこんな愚痴をこぼしていました。「まだ中国の銀行口座を持っていないので電子マネーが使用できない。買い物の時にわざわざ『現金を使えますか』と聞かなければいけないのが大変だ」。中国ではそれほどまでに電子マネーが浸透しているのです。
その後は学校や職場に向かうためにバス・電車に乗ります。日本の場合は定期券のICカードが主流でしょうか。中国ではスマホにインストールした交通機関用の決裁アプリを使用します。乗降時にスマホをかざすことで決裁ができるもので、ほとんどの人がこのアプリを使用しています。そのため、携帯電話を無くしてしまうと公共交通機関が利用できなくなり、帰宅するのも困難になってしまいます。
昼食時にもITサービスが利用されています。外食する人もいれば、弁当を持ってくる人もいますが、それと同じように外卖(ワイマイ)を利用する人も多いです。外卖とは、言わば出前です。専用のアプリから好きなお店と料理を注文すると、1時間以内に指定した場所まで届けてくれます。このサービスが中国では非常に浸透しており、自分でお店に出向いて弁当を購入する人は中国では非常に少なくなっています。
最後は帰宅です。中国ではタクシーの料金が日本よりも安いことから、都市部では帰宅時にタクシーを利用することもよくあります。その時に利用されているのが、配車アプリです。現在地(乗車地)と行き先を設定して、利用したいタクシー会社を選択するとアプリが自動で注文してくれます。車種やサービス内容なども選ぶことができ、誰でも簡単に配車を依頼することが可能です。注文すると、何分後にタクシーが到着するかや、タクシーの現在地を地図上で確認するができるため、ストレスなくタクシーを呼ぶことができるのです。このアプリは5年ほど前から利用が広がっており、特にコロナ下では人混みを避けて移動したい人のニーズが後押しとなり、爆発的に普及しました。
こんな風に、中国の日常にはスマホを活用したITサービスが深く浸透しています。日本でも今では多くの人がスマホを所有しているかと思いますが、中国では生活を支えるツールと化しています。日本ではスマホを落とすと「連絡ができない」や「個人情報の漏洩」といった程度の心配で済みますが、中国でスマホを落とすと生活ができなくなってしまうのです。もちろん、こうしたスマホへの依存によるリスクもありますが、その反面、生活は非常に便利になっています。「中国はあらゆるものが早い」と言いますが、その根底にあるのは人々の生活を支えるITサービスなのです。