第31回 管理されることへの抵抗も日本と異なる[今日の中国]

▲入店前にはQRコードによるチェックが行われる

 世界中で新型コロナウイルスが猛威を振るい続けています。日本は2度目の緊急事態宣言が発令中。予断を許さない状況が続いていますが、今回は中国での感染状況について紹介したいと思います。

 中国において、本当は深刻な感染が今も広がっていると考える方も中にはいらっしゃるかもしれません。もちろん、新規感染は今も発生しています。ただ、日本に比べ感染者数は少ない状況です。2020年12月末時点の累計感染者数は日本が32万人でしたが、中国は9.5万人です。1月の新規感染者数は中国本土で100人前後です。公表数値の信ぴょう性に対する考え方はみなさんそれぞれ異なると思いますが、10億人という総人口を鑑みると、少なくとも、押さえ込みに成功していると言って良いと思います。

 初動対応は、日本のそれとはまったく異なります。私が住む上海では、新型コロナの感染が確認されると、本人や濃厚接触者は当然のこと、感染者が住む家に関係する人も全員ホテルに隔離されます。感染者がマンションに住む場合は、同じマンションの住人全員が隔離されます。勤務先の同僚、会社があるビルの関係者も、即座に14日間の隔離が義務付けられます。感染者が訪れた飲食店、店舗も営業を休止し、消毒作業をしなければいけません。日本でここまで徹底した対応はできていないと思います。

 中国がこうした対応を取れるのは、政府管理が日本に比べて厳しいからです。国民や、私のような在中外国人も、個人情報をQRコードにひもづけて日常的に管理されています。私がよく行く日系スーパーに買い物に行くと、売り場にたどり着く前に検温などの健康チェックが2回行われます。その結果は個人QRコードで識別され、データベースに蓄積されます。こうした管理により、中国で生活する人は「いつ、どこで、どんな症状の人と接点を持った可能性があるか」をおおまかに把握することができるのです。

 こんな話を聞くと、日本では人権侵害と捉える方が多いのではないでしょうか。しかし、中国では、個人データを政府に管理されることにさほど抵抗がないのです。安心の保証につながると考える人が大半でしょう。国民性の違いであり、真似するのは難しいかもしれません。ただし、この中国の国民性が、徹底したコロナ対策を実行することに、一役買っているのは間違いありません。「新型コロナの感染拡大を抑える」という思いは万国共通だと思いますが、内容と対応の早さが、感染者数の差を生んでいると感じます。

 日本で2度目の緊急事態宣言が発令された翌日、朝の通勤でいつもと変わらぬ満員電車の風景が報道されたことに衝撃を受けました。日本でも多くの人が高い危機意識で対策に取り組んでいると思いますが、緊急時でも多くの人が仕事に行かなければならないことも、また、両国の国民性の違いかもしれません。

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