第38回 日本からの帰国ラッシュに空港で長蛇の列[今日の中国]

▲知人が見せてくれた成田空港の写真

東京五輪中の感染拡大にショック

 東京オリンピック開催の真っただ中にあった8月5日、日本で1日あたりの感染者が1万5263人を記録しました。東京都で5042人、神奈川県で1846人、埼玉県で1235人、千葉県で942人、いずれも過去最高となる人数だったそうです。また別の日には、私の日本の家がある宮古島でも感染者数が増え続けており、人口あたりの感染率が世界一高いとの報道もありました。一方、中国国内では感染者が非常に少ない状態が続いており、外国からの帰国者の感染を除けば、国内での感染はほぼゼロ。そんな最中での日本の報道に、驚きを隠せませんでした。

 最近、中国の知人からこんな話を聞くことが多くなりました。「日本を離れる中国人が増えている」。中国の中級家庭では、留学や就職で子供が日本で生活しているという家庭が多いのですが、そうした在日中国人の多くが新型コロナを恐れて中国へと帰国しているそうです。先日も知人から、息子が撮影したという成田空港の写真を見せてもらいました。写真は、誰もいない成田空港の出国ロビーの写真。例年の8月の成田空港といえば、夏休みで海外旅行に出かける人が沢山いたのに、打って変わって閑散としていました。そんな閑散とした出国ロビーの一角では、約100メートルにもわたる長蛇の列が出来ており、聞けば、中国便のチェックインのために並んでいる人たちだそうです。知人の息子いわく、「東京は危険だから、一刻も早く逃げ出そうとしている」と考えられているのです。

 知人の息子は行列に並ぶ間に周囲の人と雑談をしたそうです。ある女性は、日本人の新型コロナに対する危機感の薄さを嘆いていたと言います。その女性はデザイン会社に勤めていて、職場はスタッフでいつも三密状態。それでも、いまだにスタッフの半数以上がマスクを着けずに平気で会話をしていると言います。ある日、スタッフの中から感染者が出たそうで、危機感を感じたその女性は、周囲のスタッフにマスクの着用をお願いしたそうです。しかし、返ってきた言葉は「仕事がしにくくなる」「大袈裟すぎる」。そんな環境で仕事を続けることに恐怖を抱いた女性は、社長に中国からのテレワークを希望し、受理されたのだといいます。

 もちろん、全ての日本の企業がこうした状況ではないと思いたいです。しかし、多くの在日中国人が日本の新型コロナに対する危機意識に疑問を感じ、恐怖を感じ、日本を離れようとしているのも事実です。

 また別の知人は、日本政府の対応への不満も口にしていました。「日本は普段は暮らしやすい場所だけど、危機に陥ったときに政府が助けてくれない。中国は普段いろいろ問題もあるが、危機に陥るとものすごい行動力で収めようとする」。確かに、私もそう感じる時があります。8月2日、武漢市で7人の感染が確認され、大きな話題となりました。7人はいずれも海外からの帰国者で、デルタ株だったと言います。ご存じの通り、武漢は世界ではじめて新型コロナの感染が確認され、ロックダウンを実施した都市です。その後1年3カ月間にわたって感染者ゼロが続いていました。そんな中での7人の感染だったので、中国国内での衝撃は大きかったのです。

 日本での新型コロナ対策は、良いものなのか、悪いものなのか。それは私には分かりませんが、8月上旬の日本での感染者数を見たときに、大きな不安に駆られました。多くの中国人が急いで日本を離れようとしていたのも、同じ理由からだったことでしょう。わずか7人の感染を問題視する中国と、1日1万5000人以上の感染が続く日本、その差はどうして生まれたのでしょうか。他の世界の人々は日本の感染者数をどう捉えるのでしょうか。世界的に広がる問題だからこそ、自国内だけの視点ではなく、世界からの視線も気にしてみると、今まで気づかなかった問題が見えてくるかもしれません。

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