第39回 再び勃発する「中国経済崩壊論」に現地の反応は冷ややか[今日の中国]

▲上海市内の様子

 私は中国に長く住んでいますが、中国でも日本のメディアを見かけることがしばしばあります。9月は自民党総裁選の話題ばかり。中国生活が長いためか、日本はどのメディアも同じような報道をしていて、うんざりする気持ちになることも増えました。日本のメディアの真価は海外メディアと比べたときにはじめてわかるものなのかもしれません。

 さて、今回のテーマは日本の報道と中国の現実の違いについてです。日本のメディアでは今年9月頃から中国大手不動産の中国恒大集団の経営破綻に関する報道が飛び交っています。そして、それをきっかけに「いよいよ中国バブルが崩壊する」とか、「中国経済ももはやこれまで」といった中国経済崩壊論に発展する報道をよく目にします。

 対して、中国現地での反応は冷ややかです。SNSでは「これで何度目?」や「結局いつも崩壊しない」などの投稿があふれており、日本での大騒ぎを物見雄山で他人事のように眺めているという反応が多いように感じます。日本企業の中国進出などをお手伝いしている私の元にも、9月だけで10件ほどの問い合わせがありました。どれも「やはり中国リスクは存在するのか」という内容です。私見では「ほぼない」と言い切れますが、実際に日本でこうした報道を毎日のように見ていると、それを鵜呑みにしてしまう気持ちも分かります。

 現地の反応が冷ややかな理由の1つに、これまでもこうした騒動が何度も乗り越えているということが挙げられます。日本でもこれまで何度もこうした「中国経済の崩壊論」があったと思いますが、今も中国経済は健在です。確かに、こうした騒動が起こったときに政府が何も対策を打たなければ、実際に経済崩壊に陥っていたかもしれません。ただ実際は、政府が何らかの対策を打ち、そのリスクを乗り越えてきたのです。しかし、日本ではそうした施策までは報道されません。何か問題が起こったときに危機をあおるような報道だけになっていて、その解決までが報道されないため、「やはり中国は危険」という印象だけが残るのではないでしょうか。

 また、日本で何度も中国経済崩壊論が勃発する背景には、日本のバブル崩壊の爪痕が残されているようにも感じます。これまで日本で何度も中国経済崩壊論が湧き上がりましたが、そのきっかけはほぼ中国不動産の暴落でした。日本では「不動産の暴落=経済崩壊」というイメージを持つ人が多いのですが、中国ではそうしたイメージはさほど強くありません。この意識の差は、日本人が未だにバブル崩壊で受けた衝撃が染みついていることの証なのかもしれません。

▲今夏訪れた際の北京市にある天安門広場の様子

 日本ではとかく中国のリスクに関する報道が多いと思います。地方債務の膨張や格差問題、最近では新型コロナウイルスの影響で中国経済が崩壊すると語る評論家もいました。日本の知人から聞いた話では、日本の書店では中国経済の崩壊に関する書籍が山積みにされているとか。現地の状況を知る私からすれば、それがうわべだけの報道にも見えます。果たして、正しいのはどちらでしょうか?

 日本に限らず、メディアは大きな影響力を持っています。しかし、特に海外の話題に関しては、日本からの見方とその国の中での見方に大きな差があることも少なくありません。メディアの情報だけを鵜呑みにせず、しっかりと自分が信頼できる情報も参考にしながら真偽を見定めるということが、現代社会では重要なのだと思います。

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