8月4日の感染者数2万200人・死者188人と過去最多 @タイ・バンコク【8月5日/新型コロナウイルス世界の反応・現地レポ】

飲食店の撤退も増加 国民の不満高まる

▲ロックダウン下の薄暗い店内では少数の客が遠巻きに足を止める

 タイでは新型コロナウイルスの深刻な感染拡大が続いている。政府機関の新型コロナウイルス感染症対策センターの発表によれば、8月4日の新規感染者数は2万200人、死者188人に上り、過去最多を記録した。前日3日の新規感染者数は1万8901人、死者147人。感染者数は連日増え続けている状況だ。

 感染しても医療機関に行けない人も多い。バンコク都内では少ないものの、タイ全土では連日のように路上で死亡している人の姿が報道されている。現地に住む日本人は「タイの病院で新型コロナの治療を受けるには、1日あたり数万バーツという大金が必要になる。一般市民に払えるような金額ではない。お金がないと病院も受け入れてくれないため、自宅などでそのまま死亡してしまう人も多い」と語る。

 タイではバンコクを中心に各地でロックダウンが実施されており、今後も延長される見通しだ。バンコクでは飲食店での店内飲食が禁止されるなど厳しい規制が敷かれており、廃業に追い込まれる店舗も増えているという。

 日本から進出している飲食店の中でも撤退する店舗が増えてきている。今年初めまではデリバリーやテイクアウトで売上を保っている店舗も多かったが、度重なる規制と先行きの不透明さから閉店する店舗が目立っている。日系企業の駐在員の中には、学校の夏季休暇に併せて共に生活する家族を日本に一時帰国させる人が増えているようで、ここ数日は日本への飛行機の座席も空席が少なくなってきた。

 これほどまでに感染が広がっている原因は、変異株の猛威とワクチン接種の遅れだ。特にワクチン接種は政府の発表と現実に乖離(かいり)があるとみられており、国民から不満の声が強まっている。在タイ日本大使館では駐在している日本人に対してワクチンを確保し、徐々に無料で接種を進めているが、タイの自国民の中でワクチン接種が進まない中で外国人が接種できることに対する批判も出ている。

 タイ経済に与える打撃も強まっている。タイ中央銀行は8月4日、今年6月に下方修正した国内総生産(GDP)の見通しをさらに下方修正した。今年6月時点では2021年が昨年度比1.8%増、22年度3.9%増としていたが、21年度0.7%増、22年度3.7%増との見通しになる。また、コロナ以前となる2019年半ばの水準に回復するのは、早くても2023年以降になるとの見通しも明らかにした。

 タイでは長期にわたって感染者の増加が続いており、国民の不満はピークに達している。新規感染者数は今後も増え続けるとの声も強く、日本をはじめとする外資系企業の撤退も続くのではないかとの恐れが高まっている。

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