セミナーは充実、企業ブースの情報は探しにくい @ヴァーチャル産業交流展【オンライン展示会】

展示会名:ヴァーチャル産業交流展 2020
会期:2021年1月20日(水)〜2月19日(金)
主催:産業交流展 2020 実行委員会(東京都、東京商工会議所、東京都商工会議所連合会、東京都商工会連合会、東京都中小企業団体中央会、東京ビッグサイト、(公財)東京都中小企業振興公社、(地独)東京都立産業技術研究センター)
出展者数:696社
来場者数:非公開

 東京都などが主催する、中小企業の技術や製品を集めた展示会「産業交流展」が、今回は「ヴァーチャル産業交流展」としてオンラインで開催された。「ヴァーチャル産業交流展」では、セミナーが充実していた一方で、企業ブースでの情報の見せ方が稚拙で、企業の概要や連絡先など基本的な情報さえ見つけにくかった。情報、環境、医療・福祉、機械・金属などの分野から696社が出展したが、たくさんの企業が出展していることに気が付くことも難しかった。開催期間に記者がオンラインで参加し、展示ブース、機能、操作感などについてレポートする。


【この記事の内容】

1.インターフェースについて
 トップページはリアル会場のような見た目
2.ヴァーチャル空間について
 テーマ別にブースが並び、クリックして関連企業に移動
3.検索機能について
 フリーワードと分野から企業を検索
4.セミナーについて
 都知事や大臣の講演と、企業のプレゼン
5.企業ブースについて
 ファイルを添付できるチャット機能を搭載
6.マッチング機能について
 企業名と特徴を一覧表示の『マッチング掲示板』にマッチング機能はない
7.出展者の声
 新しい試みがなく期待外れ
8.まとめ
 不要な機能が多い一方、基本的な情報が見つからない


1.インターフェースについて

トップページはリアル会場のような見た目

 登録後に、ログインして会場に入る。ログイン画面には、バナーで『圧倒的なヴァーチャル空間』や『オンライン上での商談が可能』といったメッセージが、入れ替わり表示された。新しい試みであることを、強くアピールしていると感じた。

 トップページは、エントランスを模した見た目で、奥にはブースが並ぶ様子が見えた。上部には、『ゾーン一覧』『セミナー会場』『ブース検索』『お気に入り』『訪問履歴』のプルダウンメニューが並ぶ。右上の三本線からは、『操作方法』『参加規約』などが参照できる。一番下に表示されるニュースは、流れるスピードが速くて、読み取りにくかった。

 左下の『会場MAP』を押すと、会場の地図が表示される。各エリアをクリックすると、会場の見取り図が立ち上がり、該当エリアに移動できる。右下の『よくある質問』には、展示会に関するQ&Aや見どころがまとめられていた。


2.ヴァーチャル空間について

テーマ別にブースが並び、クリックして関連企業に移動

 中央の動く矢印をクリックすると、ヴァーチャル空間に入る。ドラッグとクリックで会場内を回遊できるが、移動できるのは赤いじゅうたんの上の白い矢印のルートのみだ。動きは軽く、慣れれば快適に移動できた。

 会場内には『SDGs』『感染症対策』といった小さなブースが並び、その1つずつに多数の出展者ブースが存在する。例えば『SDGs』ブースをクリックすると、関連する企業の社名が一覧で表示されるので、クリックして各企業のブースに移動する。


3.検索機能について

フリーワードと分野から企業を検索

 ブースの検索は、『フリーワード』と『分野別』で行う。どちらの方法でも、企業名をクリックすると詳細情報が表示されて、ブースに直接リンクする。

 検索結果の一覧から検索画面に戻るためには、『検索結果のリセット』ボタンを押す仕様であった。ブラウザの『戻る』ボタンを押すと、エントランス画面に戻ってしまった。ランダム検索では、ジャンルを限定せずに10~11社が無作為に表示された。


4.セミナーについて

都知事や大臣の講演と、企業のプレゼン

 基調講演と特別講演の『メインステージ』、出展企業による『サブステージ』の2カ所で視聴できる。

 『メインステージ』には、小池都知事、ワークマン(群馬県伊勢崎市)の土屋哲雄専務取締役、台湾デジタル担当大臣のオードリー・タン氏、アスリートなど、今の時代を反映した人々が登壇した。視聴期間が限定されるセミナーもあったが、おおむね会期中に見ることができた。毎朝10時には、1時間程度のビジネスセミナーが、1つずつ公開された。

 『サブステージ』は、出展企業による15分ほどのプレゼンテーションの場だ。企業ブースにリンクするボタンが設置され、動線はスムーズだった。

 主催者の問題ではないが、出展者がセミナー動画で使用する資料画像が見づらかった。文字が多すぎたり、図解が複雑だったりと、1ページに情報をつめ込む企業が多く、画面をフルサイズにしても、判読が難しいものもあった。


5.企業ブースについて

ファイルを添付できるチャット機能を搭載

 企業ブースは3Dの平面で、複数のデザインがある。看板には企業名とロゴが配置され、ブース内の展示物をクリックすると資料や動画、企業情報に移動する。情報が多い一方で、「どんな企業か」「何を扱っているか」「何を展示しているか」といった基本的な情報は伝わらなかった。

 動画は小さい画面で再生されるので、そのままでは詳細は全く見えない。クリックしてYouTubeに移動するか、全画面表示にする必要がある。パネルは別タブが開いてPDFやパワーポイントの資料が表示される。クリックする度にタブが増えていくので、閉じるのが大変だった。

 中央の黄色い『企業詳細』を押すと、文字情報の画面が新たに立ち上がる。企業のウェブサイトや連絡先の記載が全くない企業もあった。電話や住所を記載する共通のフォーマーットが用意されていないのかもしれない。

 ヴァーチャル空間とは異なるプラットフォームなのか、上部のメニューは表示されない。代わりに付箋のようなメニューが右側に現れ、企業のSNSへのリンクもあった。企業の情報を得るためのツールや資料が、まとめられている。

 『商談はこちら』をクリックすると、Zoomなど3種類のツールでオンライン商談ができる。しかし、平日のビジネスアワーにも関わらず、ほとんどの企業は対応不可になっていた。『動画』『パネル』には、企業の動画や資料が詰め込まれていたが、資料の一括ダウンロード機能はない。


 右下の吹き出しを押し、「名前」「企業名」「メールアドレス」を入力すると、チャットが表示される。多くのオンライン展示会にはない機能として、チャットフォームからファイルの添付もできるので、資料のやりとりに便利そうだ。

 企業ブースでも、前画面に戻るボタンはなく、タブから戻らなけばならない。「トップ画面に戻る」「前の画面に戻る」機能は、全てのページに必ずつけてほしいと感じた。


6.マッチング機能について

企業名と特徴を一覧表示の『マッチング掲示板』にマッチング機能はない

 ログイン前の画面に戻り『マッチング掲示板』を訪ねた。企業名が一覧で並び、各社の特徴がテキストで表示される。

 企業名をクリックしても反応はなく、リンクの設定はない。一番下の『出展者検索はこちらから』を押して、エントランス画面に戻ってから、各自で『ブース検索』を行わなければならない。開発途中なのではないかと思うほど、マッチングの機能は全く果たしていと感じた。


7.出展者の声

新しい試みがなく期待外れ

ジャムハウス(東京都杉並区)

 展示会のサポートや求人コンサルティングを行うジャムハウス(東京都杉並区)は、オンライン展示会を体験するために出展した。リアル展示会をヴァーチャル空間で行う手法では、新しいことは生まれないと感じた。期待していた成果も出なかった。ヴァーチャルならではの試みが体験できると良かった。


8.まとめ

不要な機能が多い一方、基本的な情報が見つからない

 セミナーは充実した内容だったが、出展企業の魅力がほとんど伝わってこなかった。必要のない機能や情報を多く提供する一方で、「何の企業か」という根本の情報提供がされていない。連絡先などの重要な情報にも、アクセスしづらい。

 エントランスで強調していた『圧倒的なヴァーチャル空間』『オンライン上での商談が可能』というメッセージは、出展者と来場者の双方が求めているものとは異なる内容であった。ITリテラシーが高い企業と低い企業があるとは思うが、どちらにとっても正解ではないプラットフォームだと感じる。696社が出展していることを気づくことができない構造だった。細かな作り込みよりも、たくさんの出展ブースに光があたる見せ方の工夫が必要ではないだろうか。

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