明確な優先順位の設定により公共交通機関の職員もワクチン対象に @シンガポール【新型コロナウイルス世界の反応・現地レポ】

▲空港関係者のワクチン接種はチャンギ国際空港で行われた

 2020年12月21日、シンガポールで新型コロナウイルスのワクチン接種が開始された。12月30日からは医療従事者を対象に、翌1月には空港や港など公共交通機関の職員らを対象に接種が進んでいる状況だ。シンガポール国内での新規感染者の多くが海外からの入国者だったことから、死亡リスクなどが高い高齢者よりも交通機関の関係者を優先する方針を取った。オン運輸大臣は「交通の最前線で働く人がワクチンを接種することで国を守り、国境を守るという点で大きな一歩を踏み出すことになる」とコメントしており、政府としては2カ月以内に3万7000人の最前線で働く人々・フロントラインワーカーズに接種を完了させる見込みだ。海外で進むワクチン接種の模様を探るため、空港に勤務する人に接種までのプロセスや感想を聞いた。

 1月13日、会社からワクチン接種の案内メールが届いた。接種の申し込みは会社単位で行っている。返信後数日経ってから連絡があり、1月20日に1度目の接種を受けることになった。接種前に健康チェックがあるため、指定時間の30分前に到着するように指示された。

 ワクチン接種の会場は、現在減便によって閉鎖されているチャンギ国際空港(Changi Airport)の第4ターミナルだ。空港関係者はこの第4ターミナルの到着ロビーがあるフロアで接種する。港湾関係者はラッフルズ・シティ・コンベンション・センター(Raffles City Convention Centre)が会場となるらしい。

 会場に着くと申し込んだ会社ごとに登録ブースが設けられていた。登録後は保険省のカウンターに行って係員からの呼び出しを順番に待つ。現場では特に混乱もなく、係員の指示に従い皆大人しくしていた。しばらくすると係員から呼ばれ、名前とIC番号を聞かれた。「ここ数日以内に注射を受けていないか」「24時間以内に発熱がなかったか」などの問診を受け、係員が回答内容をパソコンに打ち込んでいった。その後、2回目の接種日と時間を伝えられ、ワクチンに関する手引き書を手渡された。

 次に待っているのは待合室だ。入口に係員がいて、座る場所を指示される。部屋の前方にはワクチン接種のブースが左右に10カ所並んでいた。入口にカーテンがかかっており、中は見えないようになっていた。ブースの前には椅子が一脚。次の人がそこで待つ仕組みだ。

 待合室で待っていると係員から呼ばれ、接種ブースの前にある椅子へ案内された。前の人の接種が終わり、名前を呼ばれてブースへ入る。中に入ると、既にワクチン液が投入された注射器が置かれていた。ワクチン液は薄い黄色のような色。当時シンガポールでは米国のファイザー社のワクチンしか取り扱っていなかったので、接種したのはファイザー社のワクチンということになる。

▲セルフィーをすすめられるなど、現場はおおらかだ

 接種にあたり、名前とIC番号を再度確認された。神妙な場かと思っていたがそうでもなく、担当した医者は非常にフランクな、おおらかな人物で、写真撮影もOKだという。2回目の接種の際には「セルフィーで撮影したら?」とまで言われた。筋肉注射なので痛みがあると言われていたが、実際には全く痛みもなく、あっという間に終わった。医者曰く「一日に数えきれないくらいの人数が接種している」らしく、ブース内には保管ボックスに入った大量の注射器が置かれていた。接種時間を用紙に書き込まれ、ブースを後にした。

 接種ブースを出ると、1つ目の待機場所に進まされた。ワクチン接種後は経過観察のため30分待機となるためだ。1つ目の待機場所では約15分間待機。時間になると2つ目の待機場所に移動させられる。2つ目の待機場所でもしばらく待機。接種時間は5分単位で区分されて記載ており、5分毎に係員に呼び出される。ようやく呼び出されて次に向かったカウンターでは、簡単なカウンセリングを受けた。名前とIC番号、接種後の体調を聞かれた後、ワクチン接種の証明書を手渡され、終了となった。証明書にはワクチンの番号なども記載されていた。

 1度目の接種の時は、注射した腕がほんの少しだけ腫れた。若干の痛みがあり、体が火照ったような感覚で寝苦しかった。足にだるさを感じたが、発熱はなかった。2度目の接種時は、1度目よりも腕が腫れ、その日の夜には寒気を感じた。熱も37度ほど。微熱は3日間続き、ひどい眠気に襲われたが、その後は特に後遺症もなく元気な日々を送っている。

 ワクチン接種した同僚らに話を聞いたが、社内でアナフィラキシーショックなど副作用があった人はいなかったそうだ。国内ではワクチン接種後に心停止したケースが1件あったようだが、ワクチンとの因果関係はないと報道されていた。今後長期的に見たときに副作用がある可能性はゼロではないが、新型コロナにおびえる不安はなくなった。

 ワクチン接種のプロセスを振り返ると、非常にシステム化されており、安心感があったと思える。ゆとりを持ってワクチンが受けられるような時間設定になっており、接種会場にはたくさんの係員が配置されていた。ワクチンを受ける人が戸惑わず、間違いなく進めるようになっている。注射を打つ医者と看護師は専門のスキルが必要となり、人数も限られているため、それ以外の臨時職員を大量に雇い、医者・看護師の負担を軽減している。臨時職員にはシンガポール人だけでなく永住権保持者でも応募でき、条件は最短3カ月間の勤務ができることのみとなっている。PCR検査も同様で、検査キットを集めるなどの作業は臨時職員が行うことが多い。もちろん、事前の研修は万全に行っているので安心できる。こうした医療従事者の負担軽減が重要なのだと感じた。

 イスラエルの発表によると、ワクチンの有効性は94%だという。新しいワクチンなので、不安がないわけではなかった。シンガポールでもワクチン接種は希望制となっているので、拒否することもできる。だが、接種しなければ空港で働く者としてカスタマーサービスには就くことができないと言われた。接種しないということは、本人のみならず乗客や同僚を危険にさらす可能性があるという観点からだろう。ワクチンの副作用も心配だが、何より新型コロナによって命の危険におびえる可能性は少なくなったと感じられた。

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