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関係者・参加者がオンライン商談に慣れる必要あり @新価値創造展オンライン【オンライン展示会】
会期:2020年12月1日(火)~18日(金)
主催:独立行政法人中小企業基盤整備機構
プラットフォーム:日経イベント・プロ
出展者数:322社
動画の視聴者数少なく、オンラインチャットも使われず
中小企業の製品・技術を集めたオンライン展示会「新価値創造展 2020」に本紙記者が参加した。出展ブース、機能、操作感についてレポートする。
【この記事の内容】
1.インターフェースについて
気になる文字情報の多さ マイページに「お気に入りブース」を表示するのが良い
2.出展者ブースについて
ブースよりも商品カタログのような見せ方 動画再生数は極めて少ない
3.企業とのコンタクトについて
オンラインチャットボタンあるが、目立つ離席中
4.セミナーについて
資料の出来がよく、ダウンロード資料だけでも一見の価値あり
5.見どころ
主催者推しのセミナーや商品
6.マッチング機能について
専門家や支援機関によるマッチングサービスを実施
7.出展者の声
資料ダウンロード19件 会期中の問い合わせはなかった
8.まとめ
1.インターフェースについて
気になる文字情報の多さ マイページに「お気に入りブース」を表示するのが良い
事前登録の上、ウェブサイトにアクセスする。トップ画面はリアル展示会場をイメージしたビジュアルだ。
『オンライン展示会場』『オンラインセミナー』といったエリア表記をクリックすると、展示会場に入る事ができる。
トップ画面では、開催概要、操作方法について、詳しく解説されていた。見やすく工夫されているが、文字情報が詰め込まれた印象は否めない。操作方法に関しては、14ページにわたるPDFのマニュアルも用意された。
自分用の索引となる『マイページ』では、商談申込、名刺交換リスト、お気に入りリストなどの情報が色分けされてバナーになっている。常時確認できるので便利だが、色分けの基準が不明確で見にくい印象だ。
2.出展者ブースについて
ブースよりも商品カタログのような見せ方 動画再生数は極めて少ない
出展製品がジャンルごとにランダム表示されている。文字情報と画像が並び、ブースというよりも商品カタログのようだ。所在地、PR商品、製品の特色がまとめられていて一覧性に優れている。
気になった企業に『お気に入り』マークをつけることができ、マイページでも確認できる。一覧表示画面でマークをつけられるのは便利だ。
企業ブースにはトップに製品画像が貼られ、製品概要の説明、パンフレットのダウンロードができる。動画は下の方に配置されており、YouTubeにアップされたものが再生される。視聴回数は1ケタ〜2ケタ台が大半で、残念ながらあまり見られていない。あるメーカーでは、展示会のために準備したと思われる3つの動画がアップロードされていたが、視聴回数は6〜20回だった。ページの作りとしてテキスト情報が重視され、動画への誘導が弱いので、仕方がないのかもしれない。
動画は製品の動作確認ができるものを中心に、コンパクトで分かりやすいものが多かった。もっと重視されてもいいように思う。主催者による出展者の取材動画もアップロードされていた(昨年開催された『新価値創造展』で撮影)。
ページの下部では同業他社のブースが紹介されており、類似ブースを回遊することができる。
スマホから参加すると、情報量が多い割に、PCの画面よりも整理され、動画視聴もスムーズだった。
3.企業とのコンタクトについて
オンラインチャットボタンあるが、目立つ離席中
企業と連絡を取るには、画面右側のボックス内に並ぶ各種連絡機能を活用する。『お問い合わせをする』『コールバックを依頼する』フォームのほか、オンライン名刺交換を行えば、オンライン商談の予約や、すぐにオンライン質問できる各種チャット機能(会期中の平日10〜17時)を活用できる。だが、手段が多すぎて、複雑な印象を受けた。
会期中の平日午後、名刺交換した企業のチャットフォームには、すべて『離席中』の表示が出ていた。開催期間が長く、リアルタイムでチャットに対応する人材を配備するのは難しいのだろう。
名刺交換した企業は、マイページの『名刺交換リスト』に入るが、反映は翌日だった。交換する際には、担当者の名前、携帯番号、メールアドレスなどの情報が表示されるが、名刺交換リストには企業名、部署名、固定電話、交換日時しか反映されない。なぜ情報が劣化してしまうのかが不思議だった。
4.セミナーについて
資料の出来がよく、ダウンロード資料だけでも一見の価値あり
企業のオンラインセミナーは、全て録画されたものだった。『基調講演・特別公演』に加え、『産業・技術』『健康・福祉』『環境・社会』といったジャンルに分けられた出展社セミナーが用意されている。すべてYouTube上にアップロードされている。企業ページと同様に、画面右にコンタクト手段のボックスが表示され、すぐにコンタクトを取れるのは合理的だ。
主催者による基調講演は、1時間以上あるものもあるが、3分割されてアップロードされている。動画の中で表示された資料は若干見にくいが、同じ資料をダウンロードできる。その内容はうまくまとめられており、資料だけでも読む価値がある。
企業に『お気に入り』をつけられるように、セミナーにも『お気に入り』をつけることができてもいいだろう。
5.見どころ
主催者推しのセミナーや商品
主催者がおすすめするセミナーや、展示商品を紹介するページが見どころだ。12のセミナーと特別展示の紹介枠があったが、リンクが設定されておらず、単なるチラシのようになっている。他の部分における動線がいいだけに残念だった。
トップページで紹介されていた『オンライン特別展示』は日経『黒須もあ(β)(くろすもあ)』とのコラボレーション企画で、電気自動車のページでは、バーチャル記者・黒須もあによる紹介動画が5本アップされていた。アニメ風の構成には好き嫌いはありそうだが、視聴しやすい。車のパーツの紹介に使われた360度画像は軽くて操作がしやすく、オンライン展示会ならではの見せ方だと感じた。
注目企業7社の特別動画枠が用意されていたが、視聴回数はページトップに掲載されたものさえ、数十回だった。人を呼びこむ動線ができていないと感じる。
6.マッチング機能について
専門家や支援機関によるマッチングサービスを実施
専門家が来場者のニーズを聞き、出展者とマッチングする『オンラインコンシェルジュ』というサービスも用意されていた。
専門家によるものと、支援機関によるものの2通りで対応する。専門家が常に2人待機しており、オンラインで相談できる。他の展示会の出展企業が「オンライン展示会ではマッチングに期待している」と話していたが、マッチングを重視する出展企業のニーズに即していると思う。
7.出展者の声
資料ダウンロード19件 会期中の問い合わせはなかった
生活雑貨のメーカー担当者
期間中、資料ダウンロード数は19件、ブースに立ち寄った人は104人いたが、問い合わせは1件もなかった。リアル展示会では名刺と引き換えに資料を渡すが、オンライン展示会ではそうならない。来場者情報が手元に残らない。期間中にオンラインでの商談には結びつかず、出展の費用対効果で考えると現状では難しいと感じている。ただ、オンラインで名刺交換した企業もあるので今後に期待したい。
メリットは、非接触であること、移動費・資料作成費が不要で安価で時間効率よく出展できること。出展準備も、自社製品のアピール文面と資料の用意だけで済んだ。
デメリットは、ブースに立ち寄ってもらえた実感が薄く、見られただけで終わった印象が強い。ウェブサイトの仕様にも課題を感じた。出展社一覧をスクロールし、中央あたりの1社を閲覧して戻ると、『出展社一覧』のトップに戻ってしまうので、どこまで見たか分からなくなる。
また、サイトに主催者の情報が多く盛り込まれ、読み込み速度が遅いことも気になった。来場者に優しい作りにすることが重要だと感じた。
オンライン展示会は、時流にかなったものだが、来場者は少なく、認知度も低い。出展者、来場者ともにオンライン展示会への慣れが必要で、浸透には時間がかかるのではないだろうか。
8.まとめ
ライブ感はなく全体的にアナログな印象を受けたが、「使いやすいカタログ」であり「マッチングを重視」したのは、オンライン展示会の在り方として、1つの形を示したと思う。だが出展者によると、まだ来場者側にオンライン商談を行う土壌ができていないようだ。商談につなげるには、周知をはじめ、サイトの仕様の改善、主催者・出展者・来場者の「オンライン慣れ」が必要だと感じた。