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動画視聴への導線に注力 他の視聴者の存在は感じさせず @海外ビジネスEXPO オンライン【オンライン展示会】
- 2020/11/24
- EventHub(イベントハブ), アウトバウンド, インバウンド, オンライン展示会, 海外ビジネスEXPO
会期:2020年11月5日(木)・6日(金)
オンライン会期:2020年11月11日(水)~13日(金)
会場:東京国際フォーラム
主催:海外ビジネスEXPO実行委員会
プラットフォーム:EventHub(イベントハブ)
参加企業からは厳しい声も
ハイブリッドで開催された「海外ビジネスEXPO 2020 東京」のオンラインに、本紙記者が参加した。セミナー視聴や企業ブースについて、出展企業の声をレポートする。
【この記事の内容】
1.インターフェースについて
「人」の存在を重視したつくり
2.動画について
トップページでは、常に動画を視聴できる仕組み
3.出展企業とのコンタクトについて
担当者のバナーが並び、人との出会いを重視
4.ライブ感
5.その他
6.参加企業の声
協業の相談と売込みばかり、肝心の商談はほとんどなし
開催期間を設けず、マッチングサービス運営に特化してほしい
7.まとめ
1.インターフェースについて
「人」の存在を重視したつくり
来場者は事前登録の上、当日はブラウザ経由で展示会サイトにアクセスする。プラットフォームには、オンラインイベントやウェビナーのツール『Eventhub(イベントハブ)』が採用されていた。
トップページのメインは動画で、ウェビナーや企業紹介が自動再生される。横には主催者からのお知らせ欄があり、ウェビナーの予告などのメッセージが流れてくる。
スクロールすると、企業の展示会担当者の写真と名前、企業名、所属部署のバナーが並ぶ。企業ではなく、担当者のバナーが並ぶことにより「人」の存在を重視したプラットフォームになっていると感じた。
2.動画について
トップページでは、常に動画を視聴できる仕組み
展示会にアクセスすると、開催中のウェビナーや企業紹介の動画が自動的に始まる。プルダウンバーで、その時間帯に視聴できる別の動画や、主催者情報の動画にも移動できる。
動画は基本的にYouTubeとリンクされており、画質はまちまちだが、タイムラグはなく快適に視聴できた。オフライン開催会場で撮影されたセミナーの再生では、雑音が目立つものもあったが、ライブ感を感じさせる部分もあった。
画面を下方にスクロールして、動画画面が見えなくなると、小さい動画画面が現れた。トップページでは、常に動画を視聴できる仕組みになっており、かなり動画配信を重視しているようだ。
残念なのは、セミナー配信企業とのコンタクトが取りにくいことだ。その企業に関心を持っても、詳細へのリンクボタンはない。動画の左上にある企業アイコンを押すと、YouTubeチャンネルに移動してしまった。いちいち企業検索をして探し出さなければならない。
動画配信中の企業に、すぐにコンタクトできるような工夫があると、出展者・来場者双方にとってメリットがあるだろう。『Eventhub』の仕様上難しいようであれば、せめて出展者からのメッセージ内にサイト内リンクを入れてはどうだろうか。
3.出展企業とのコンタクトについて
担当者のバナーが並び、人との出会いを重視
トップページの動画下には、担当者の写真と名前、企業名、所属部署、自己紹介の冒頭が記されたバナーが並ぶ。フリーワード検索で、探している業種、エリアなどを絞り込むことができる。企業のバナーを並べるのではなく、担当者のバナーが並ぶことで、この展示会は「人」との出会いを重視していることが伝わる。
バナーをよく見ると、同じ企業でも、部署・役職が異なる人が並んでいることに気づく。5〜6人並ぶ場合もあった。どのような役割分担がされているのか、誰とコンタクトを取るべきか迷う。
担当者とのコンタクトはスムーズに行われた。担当者のページから、メッセージや、オンラインミーティングのリクエストを気軽に送ることもできる。オンラインミーティングは開催期間中の10時〜17時25分まで、Zoomを介することなく『Eventhub』で行うことができる。どの時間帯が商談で埋まっているかの一覧で見ることもできた。
Eight(エイト)などのオンライン名刺を自分の管理画面で登録すれば、メッセージ上で名刺交換もできる。リアルタイムで返信はないが、やりとりがスレッド形式で表示され、メールに通知がくるので、タイムラグはそれほど気にならない。
担当者情報とは別に、企業ページも用意されている。会社概要のほか、資料のダウンロードや動画の視聴もできる。動画は短めのものをアップロードしているところが多い印象だった。
履歴や、企業ページのブックマーク機能があれば便利だと思った。サイト内を回遊していると、どのブースの何を見たのかを忘れてしまう。人をお気に入りに入れることはできるが、会社を入れることはできない。
4.ライブ感について
動画が随時流れていたり、主催者からのお知らせが定期的に配信されることで、動きを感じることができる。しかし、他の来場者の存在を感じることはない。
動画以外からは、偶然の出会いは起きないだろう。
5.その他
最終日、開催時間帯の終了間際に、参加企業とメッセージ上でやりとりをしていた。18時にサイトが見られなくなると知り、重要そうなメッセージやページはスクリーンショットしておいた。18時ちょうどにサイトはクローズになり、アクセス不可になった。「海外ビジネスEXPO 2020」の主催者サイトへのリンクもない。
事前に知っていたので対処できたが、やりとりが途中で会期終了を迎えてしまうケースもあるのではと心配になった。
6.参加企業の声
協業の相談と売込みばかり、肝心の商談はほとんどなし
レガーレ(東京都港区)
福岡・東京のハイブリッド開催に出展した、海外進出支援を行うレガーレに出展の感想を聞いた。
リアルの展示会では製造業やメーカーや、同業者からの協業の相談など、1日20社と出会うことができた。しかしオンラインでは、会期中を通じて連絡を取ったのは約10社、その大半が相談ではなく、同業者や翻訳会社からの売り込みだった。顧客獲得にはつながらず、正直、来場者がどこにいたのか分からないのが正直な感想だ。出展者を納得させるような、本当にビジネスをしたいと考えている層の集客が課題だと感じた。
通知はメッセージが来た時のみで、自社ブースにアクセスがあっても、通知は来ない。資料をダウンロードした人の情報は、1週間後くらいに送られてくるが、タイムリーには分からない。総アクセス数は不明のままだ。
リアルタイムでどんな動きがあるかが分からないと、非常に不安になる。アクセスはしたがすぐに離脱してしまう、資料をダウンロードしたがメッセージまではいかなかったなど、来場者がどんな動きをしたのかを知りたかった。人の存在を感じられなかった。
最終日の18時ちょうどに、主催者もあっけなくアクセスできなくなるのにも驚く。福岡のオンラインで知っていたので、メッセージ上での大事なやりとりは会期中にスクリーンショットしておいたが、知らずに困った人もいるのではないだろうか。
別の展示会に来場者として参加してみたが、同様に人の存在を感じることができなかった。企業に関心を持っても、資料をダウンロードすることで満足してしまい、わざわざメッセージを出そうとは思わなかった。オンラインは、リアルの代わりだと考えると物足りなさを感じるが、全く違う場として位置づけると感じ方が変わるのかもしれない。
開催期間を設けず、マッチングサービス運営に特化してほしい
ワイズアンドパートナーズ・ジャパン(横浜市)
東京会場にて、オンラインとリアル双方に出展した、アメリカ進出を支援するワイズアンドパートナーズ・ジャパンには、オンライン展示会の会期中に8社からコンタクトがあった。
アメリカ進出を再検討する企業からのコンサルティング依頼、既存客との情報交換の他は、売り込みの連絡だった。自社の告知ページに動画を掲載せず、サイトを有効活用できたわけではない。
来場者と接点を持つために、来場者をキーワード検索できる機能を活用した。検索精度は低かったが、属性、社名、連絡先を得た。次回以降、業界別検索ができればさらに良いと感じた。
リアル会場には43社が来場したが、昨年に比べ規模が縮小され、個人事業主が多く、成約につながりそうな出会いはなかった。
オンライン展示会の場合、開催期間を限定する必要を感じることはなく、通年のマッチングサービスとして運営した方がよいと感じた。
7.まとめ
リアルの展示会とは、全く違う場として定義し直した方がいい
人にフォーカスを当てたプラットフォームは新鮮だったが、肝心の集客、そして展示会自体が消滅してしまうことが課題だと感じた。最終日の夕方、主催者から「もうすぐクローズになるので、ぜひマッチングしてください」というフォローの留守電が入っていたが、その数時間後にはもうサイト自体が消えてしまった。展示会自体が幻だったのだろうか、という不思議な体験だった。