『コロナ0』が101日目にして破られる @タイ・バンコク【9月5日/新型コロナウイルス 世界の反応・現地レポ】
- 2020/9/21
- タイ, 新型コロナウイルス世界の反応, 新型コロナウイルス関連記事
新型コロナウイルスの新規国内感染者が100日連続でゼロを記録していたタイで、新たに感染者が見つかった。バンコク都内の複数の飲食店でDJとして働く男性で、違法薬物使用の疑いで逮捕されたことを機に検査したところ、陽性が発覚した。家族など濃厚接触者10人が隔離されて検査を受けているほか、勤め先である飲食店は営業停止となった。男性に海外渡航履歴はなかったという。新規国内感染者ゼロは101日目で途絶えることになった。
この事態を機に、タイでの『コロナ0』神話が揺らいでいる。ほかにも、タイから帰国したミャンマー人や、日本に入国したタイ人でほかの国への渡航履歴がないにも関わらず感染が疑われているケースが複数あるためだ。タイでは国民や在住外国人全員が検査を受けているわけではなく、感染しても無症状のケースもあるため、水面下で感染が広がっているのではないかという疑心暗鬼に陥っている人もいるようだ。
タイでは政府による非常事態宣言が今も続いている。特に苦境に立たされているのがナイトエンターテインメントで、7月からは営業再開されたものの、外国人観光客が激減していることから、実際に営業を再開している店舗は少ない。バンコク市内の高級ホテルに勤めるマネージャーは「夜間の外出が禁止されていたときよりはましになったが、外国人観光客が戻ってこない以上、事態は改善しない。ホテルは国内客でしのげているが、バーなどは絶望的な状況だろう」と語る。
一方で、タイでは政府の支持率低下が問題となっている。数年前から続く景気の悪化と選挙における不正が疑われたことがきっかけで、現政権への批判が強くなっていた。加えて、最近強まっているのが王室に対する批判だ。タイの近代の歴史では王室に対する批判が高まることは異例中の異例ともいえる事態で、日本とは違いタイでは王室が強い権力を持っていることから、王室批判に対する刑事罰もあるほどだ。だが、反政府側から王室不敬罪の撤廃を求める声が上がっていたことを受け、今年6月に現国王が政府に対して王室不敬罪の一時停止を命じた。これにより、政府による取り締まりが緩和され、反政府運動が広がっている状況だ。最近は反政府集会の主要メンバーが逮捕されるなど、不穏な動きが強まっている。
こうした動きが加速し、現政府の体制に変化が起きるようなことがあれば、国民生活はもちろん、経済活動にも大きな変化が起きる可能性もあるとみられており、さまざまな関心が集まっている。