ラグビーと防災学習でにぎわう市、新型コロナでも海外PRの手を止めず
2019年のラグビーワールドカップでひときわ注目を集めた市がある。『ラグビーのまち』を名乗る、岩手県釜石市だ。同大会のために新設した釜石鵜住居復興スタジアムは、震災で被害を受けた旧鵜住居小学校・釜石東中学校の跡地に建設されたスタジアム。大会後、国際統括団体ワールドラグビーの年間表彰式では、ラグビーの価値を社会に広めた団体を称える「キャラクター賞」を釜石市が受賞した。そんな釜石市だからこそ、毎年ラグビー合宿や教育旅行の受け入れの他、欧米やオセアニア地域からの宿泊者が一定数訪れている。同市のDMOである「かまいしDMC」にとってもインバウンドは欠かせない事業となっている。
2019年度はラグビーワールドカップ日本大会の受け入れに伴う環境整備に取り組んだ。Facebookの英語アカウントを充実させた他、ビーガン・ハラールメニューの提供店舗を強化。Wi-Fiスポットや市内の多言語サインを充実させた。また、東日本大震災の経験を基にした防災学習にも注力。国際防災学会の視察の誘致や、インドネシア・アチェ津波博物館やハワイ津波博物館との交流、ASEANの防災関係者の研修受け入れなど国際的な交流を強化した。昨年度は防災関連の研修だけで3600人以上が釜石市を訪れたという。
今後の課題は観光資源の磨き上げだ。漁村体験や伝統芸能体験、防災復興関連のコンテンツなどを準備しているが、インバウンド対応がまだ整っていない。今後はSUP(スタンド・アップ・パドルボード)やシーカヤックによる定置網の見学といった海のアクティビティに力を入れていくという。また、既に日本人向けに提供するものに対する外国人モニターツアーも実施し、磨き上げにつなげる予定もある。
『ラグビーのまち』だけではなく、防災のまち・観光のまちとして、今後もインバウンドの強化が見込まれている。
今伝えたいこと
河東 英宜取締役事業部長
新型コロナウイルスの影響により今年度はインバウンド市場の急速な進展は望めない。当面は国内市場へのプロモーションを軸に、インバウンドはできる範囲で取り組んでいく。具体的には、外国人向けにYouTubeやインスタでの発信をしていく予定だ。釜石市が持つ集客の源は主に3つ。ラグビーワールドカップのレガシーと、東日本大震災からの再生力と防災学習。そして、三陸復興国立公園や豊かな食資源といった観光資源だ。これらの魅力がしっかりと伝わるよう、海外に対しても情報発信は続けていきたい。
設立年月:2018年4月2日
所在地:岩手県釜石市魚河岸3-3
参加自治体・企業・団体:釜石市産業振興部商工観光課、釜石市総務企画部、オープンシティ推進室、(一社)釜石観光物産協会、釜石商工会議所、パソナ東北創生 他
年間延べ宿泊者数:16万9203人(2019年度)
代表者:野田 武則釜石市長・代表取締役