国内メーカーの主戦場は部品製造 @国際航空宇宙展

 4年ぶりに開催された「国際航空宇宙展」は、東京ビッグサイト西全館に792の企業・団体が出展し、過去最大の規模となった。日本の航空機部品製造は、今も拡大が続く成長分野であり、国内メーカーとの関係を狙う中小企業の出展と、防衛庁との接点を探る海外メーカーの存在が目立った。

展示会名:国際航空宇宙展
会期:2016年10月12日(水)~15日(土)
会場:東京ビッグサイト 西展示棟全館
主催:(一社)日本航空宇宙工業会、東京ビッグサイト

▲華やかな会場入り口

ボーイング777に使われる部品の35%が日本製

 日本の航空機産業は1兆7000億円市場で、この10年間で6000億円拡大した。この恩恵をもたらしたのは1995年に就航したボーイング777だ。機体に採用された部品において、国内メーカーのシェアが一気に増えたのだ。約35%を日本製の部品で作ったため、777が増産されるのに合わせて国内メーカーの売り上げも伸びた。という事情もあって、国内の航空機産業は、部品製造が主役だ。三菱航空機の『MRJ』や『Honda Jet』が注目されるものの、機体そのものの製造・販売が市場に与える影響は今のところ微々たるものだ。

 とはいえ、航空機需要は、これから先も人口が増加するアジアを中心に、毎年5%ずつ拡大するといわれており、先行きは明るい。

 出展者数が伸びた理由はもう1つある。海外勢の伸長だ。エアバスグループ、ボーイングといった航空機業界の大手が出そろったのは初めてのことだ。

 これまでそれほど積極的ではなかった彼らの姿勢に変化が表れたのは、日本の防衛省の存在が大きいらしい。主催者事務局の栗山純郎部長は出展を呼びかけるため海外企業を訪問した。その時、彼らから必ず聞かれたのが「ディフェンス(防衛省)は参加するのか」ということだった。今回の航空宇宙展では、1年前に設立されたばかりの防衛装備庁が出展した。これが海外勢の背中を後押しすることになった。

 防衛装備庁が参加した目的は、航空機をはじめとする日本の防衛技術や装備政策を発信することだ。海外の軍関係者にとっても、これまで日本の自衛隊は技術協力をする相手として遠い存在だったようだ。だが、2014年に防衛装備移転三原則が定められてから、防衛装備や技術協力に関する共同研究を進めやすい環境が整った。

 開催初日の夜には、椿山荘でレセプションを開催した。稲田朋美防衛大臣も駆けつけ、15カ国から訪れた200人の来賓をもてなした。

 海外の航空ショーでは、軍関係者が展示会運営に関わることが当たり前となっている。航空機業界にとって、主要な取引先だからだ。

▲(一社)日本航空宇宙工業会の栗山純郎部長に話を聞いた

世界の2大航空ショーはフランス・パリとイギリス・ファンボロー

 航空宇宙関係の展示会では、世界的にはフランスのパリとイギリスのファンボローの航空ショーが有名だ。それぞれ2年に一度交互に開催するため、毎年どちらかの都市で世界の航空機関係者は一堂に会す。業界では、ベルリンとシンガポールを加え、四大航空ショーと呼ぶことが多い。

 日本の「国際航空宇宙展」は、第1回が1966年に行われ、その後不定期に開催されてきた。2000年以降4年に一度のペースが定着し、今年は14回目の開催だ。東京は一歩遅れをとっている。

 「次は2年後に」と期待する出展者も多かった。主催者は会期後のアンケートを見て、検討すると話している。


海外メーカーの注目を集めた防衛装備庁

▲海外の軍幹部が招かれた

防衛装備庁(東京都新宿区)

 昨年10月に発足した防衛装備庁も出展し、フィリピン、カンボジア、インドネシア、モンゴル、ミャンマー、シンガポール、タイ、ベトナム、サウジアラビアの軍幹部がブースを訪れた。


海難事故で活躍する飛行艇

▲海に着水する映像を流した

新明和工業(兵庫県宝塚市)

 新明和工業(兵庫県宝塚市)の飛行艇『US-2』は、海の上でも陸と同じように離発着が可能だ。展示ブースでは、海上に着水する『US-2』の映像が流された。

 「北欧の大手部品メーカーの担当者との商談など、新しい出会いがあった」と海外営業企画部の石﨑義教部長は話しており、手応えを感じていたようだ。


▲ボーイング777型用の部品を製造する富士重工業(東京都渋谷区)

富士重工業(東京都渋谷区)

 富士重工業(東京都渋谷区)が展示したのは、ボーイングから受注する777用の中央翼と呼ばれる部分だ。4月に、中央翼専用の組み立て工場が愛知県半田市で完成し、年末から増産に入る予定だ。


国際イベントニュース 編集長 東島淳一郎

国際イベントニュース編集長 東島淳一郎

2009年全国賃貸住宅新聞社入社。劇団主宰者から銀行勤務を経て30歳で記者に転身。7年間の記者生活を不動産市場で過ごす。2016年9月、本紙創刊とともに現職。

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