王室に対する不敬罪の廃止をデモで叫ぶ市民 @タイ・バンコク【7月20日/新型コロナウイルス 世界の反応・現地レポ】
- 2020/7/23
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タブーを超えたバンコク市民 不安定な政情
タイの歴史が大きく動こうとしている。7月18日、バンコクで大きな反政府集会が開かれた。そこには、一般市民がこれまで公に声を上げることのなかった題材が含まれていた。王室に対する不敬罪の廃止を求める声である。
2006年以降、タイの政治は泥沼状態が続いており、政情不安が収まらない。政権側と反政府側に世論も二分され、双方の陣営がデモを繰り返している。着地点を失った末、2014年に陸軍が無血クーデターを実行して誕生したのが現政権だ。
当初はどちらの勢力でもない存在として喜ばれたが、選挙を経ても政権を握り続ける軍関係者にタイ人の不満が募りはじめた。新型コロナウイルスの感染拡大以前から、タイ人は不況を口にして、現政権への不満を高めていた。
2019年の選挙で新勢力が議席を得たが、現政権につぶされると、若者を中心にタイ政府への不満が爆発した。軍事政権はタイ王室の擁護派でもある。タイ国外ではタイ人活動家が行方不明になり、政府の関与を疑う市民が多かった。
これらの末に起きたのが今回の反政府集会だ。数千人規模という、最近では見られない大規模な集会になった。その場所で、王室不敬罪の廃止を訴える声が上がった。タイのことを知らない人にはピンと来ないかもしれないが、タイでは王室不敬罪について語っただけで逮捕される。そこに声を上げることは、歴史の転換点になりつつあるといって、大げさではない。
タイ政府は海外からの入国に対して、強硬な手段を取り続けている。労働許可証保有者やタイ人の配偶者がいる場合は入国できるよう規制緩和がされたものの、日本のタイ大使館を通さなければ航空券すら買えない。タイ国内に到着しても14日間の隔離はそれなりのグレードのホテルに滞在する必要があり、入国するだけで数十万円がかかるとされる。
非常事態宣言は8月末まで再延長となり、緩和する気配はまだなさそうだ。一方で、国内に在留するすべての外国人に7月末まで与えられていた滞在許可は、再度無料で延長することが決まった。25万人いるとされる自国に帰ることができない外国人には朗報となった。外国人観光客による国内消費が失われた今、外国人25万人が落とす外貨は捨てがたいのかもしれないが、タイ政府の恩情に感謝する外国人もいる。