温泉旅館の働き方改革へ【全国DMO巡り Vol.39】(一社)加賀市観光交流機構

▲開湯1300年の歴史を持つ山代温泉は、北陸新幹線金沢開業を迎えるにあたり、明治時代の総湯を出来る限り忠実に復元した「古総湯」として立て替えられた

事業者集め経営塾開催
就活サイト立ち上げ若手人材を確保

▲江戸時代中期には総湯を取り囲むように19軒の旅館が軒を並べていた。明治19年頃の様子

 北陸新幹線の終点・金沢駅から南西へ約30分。温泉地として人気の加賀市は、人材不足に悩んでいた。2015年3月に長野―金沢間の北陸新幹線が開業したことにより都心部からのアクセスが向上。東京駅からの所要時間は約3時間になった。観光客が増えた一方で、市内の温泉旅館では従業員が不足し、予約を断る状況に陥った。

 原因は、従業員の高齢化だ。宿泊業は休みが取りにくく、長時間労働や早朝・深夜勤務、土日祝日勤務も常態化している。低賃金で、求職者からは不人気とされることが多い。市内にある多くの温泉旅館も同様で、人材の確保に頭を悩ませていた。「観光客がいて、旅館には空き部屋もあるのに、宿泊を受け入れられない。これは宿泊業者にとっての問題だけではなく、地域の問題として対策を取るべく、官民一体となって働き方改革と就労環境の改善に取り組むことを決めた」(園田一事務局長)

▲ 旅館の雇用促進を目指して発足した「KAGAルート」

 機構は2018年に地域DMOに認定され、初年度に2000万円をかけて、旅館の雇用促進プロジェクト「KAGAルート」に取り掛かった。市内の宿泊事業者が参加し、就労環境の改善とイメージ向上、人材確保に向けた施策を実施した。専用の求人サイトを立ち上げ、旅館と求職者が直接つながれる仕組みを作り上げた。

 北陸新幹線金沢の開業から早5年が経ち、開業効果も一段落。今後は特需に依らない観光振興策が求められる。

今伝えたいこと

園田 一事務局長

 金沢観光の温泉地として多くの宿泊客を迎えているが、二次交通の不便さなどから、温泉地以外の地域の観光の活性に結びついていない。数年前から地域内の乗り物や施設の利用券とスイーツなどの食事券をセットにしたクーポンを用意し、販売を始めた。2016年度の販売数は1万3110枚だったが、18年度は2万2000枚と増加している。滞在時間を高めることで地域の観光振興に結びつく。今年度の目標は2万4000枚だ。

法人名:(一社)加賀市観光交流機構
設立年月:2010年12月16日
所在地:石川県加賀市作見町ヲ6番地2

参加自治体・企業・団体:加賀市、加賀商工会議所、山中商工会、片山津温泉観光協会、山代温泉観光協会、(一社)山中温泉観光協会、加賀農業協同組合、石川県漁業協同組合加賀支所、山中漆器連合協同組合、加賀九谷陶磁器協同組合ほか164団体・事業者
年間延べ宿泊者数:国内 168万2493人/海外 8万4539人(2018年)
代表者:山下 正純代表理事

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