伊勢神宮のお膝元、三重県伊勢市は、20~40代女性観光客のリピート率向上に向けてオリジナルブランドの開発を進める。土産品のラッピングやロゴを女性向けデザインに変更したほか、真珠やストール、ドレッシング、ポストカードなど12種類を新たに開発し、『伊勢外宮参宮みやげ』としてブランド展開を図る。伊勢神宮の参道沿いにある老舗土産店「伊勢菊一」で販売する。
ブランドの指揮を執るのは、2015年に設立したDMO、伊勢まちづくり(三重県伊勢市)だ。狙いは、これまで市内を訪れていた観光客層とは異なる、新たな客層をつかむことだ。中村聖さんは「伊勢神宮の知名度は高いが、内宮を参拝するだけで帰ってしまう人も多い。もっと伊勢市全体の魅力を伝え、域内での滞在時間を増やさないと、地域活性につながらない」と話す。
2013年には、20年に1度しかない宮の建て替え「式年遷宮」が実施され注目を浴びた。参拝者は、1895年に統計を取り始めてから最多となる約1420万人に上ったが、2015年は838万人に落ち込んだ。「2013年と比べれば急減だが、それでも過去6番目となる人数だった。式年遷宮後の新たな観光ブランドが必要」(中村さん)
現在は女性向けブランドの立ち上げのほか、地元に詳しい案内人が観光客をガイドする『お伊勢さん観光案内人』の運営も開始した。地元商工会議所が検定を主催し、地元の知識や観光客に対するホスピタリティなどの審査を通過した人が認定される仕組みだ。「式年遷宮翌年以降の落ち込みは、過去に比べて緩やかになった。市や商工会議所、神宮、観光協会と連携し、伊勢の新しい魅力づくり、情報発信に努めてきた成果だと思う。今後は、中心市街地を訪れる観光客の滞在時間が少しでも増えるよう、まち歩きの事業にも力を入れたい」(中村さん)
今伝えたいこと
吉川 松喜社長
伊勢まちづくりは株式会社としてまちづくりをマネジメントしている組織だ。株主は伊勢市をはじめとする行政・業界団体や、地元のメディア、交通、地銀など幅広い分野の民間企業で、出資者だからこその立場で伊勢の観光を盛り上げ、地域経済の発展に熱意を持って取り組んでいる。
お伊勢参りだけに終わらない誘客を図り、中心市街地を活性化させることが、まちの元気につながる。若い世代や外国人にも魅力的な、新しい伊勢を開発しながら“日本人の心のふるさと伊勢”を体験してもらいたい。
設立年月:2015年2月
所在地:三重県伊勢市岩渕1-7-17
参加自治体・企業・団体:伊勢商工会議所、伊勢市観光協会、伊勢市商店街連合会、伊勢市、民間企業ほか
年間延べ宿泊者数:国内 71万5345人/海外 2879人