雪だけでは戦えない【全国DMO巡り Vol.10】(一社)雪国観光圏

▲津南町の見倉集落

 「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」雪国の冒頭で川端康成が描いたのは、群馬県みなかみ市から新潟県湯沢町に抜けた鉄道からの風景だ。トンネルが貫通する谷川岳と、そこに連なる三国連山の北麓・南麓に広がる3県7市町村が、雪国観光圏(新潟県南魚沼郡)を組織する。県をまたいでいるのは民間主導で作られたからだ。旅館組合の青年部が中心となり10年前に発足した。

 ウィンタースポーツがかつての人気を失い、観光客の減少が続いていた当時、7年後に控えていた北陸新幹線の開通は脅威でしかなかった。観光で生き残るため、この土地でしか得られない本質的な魅力を打ち出そうと意気込んだ。だが、「雪」以外に答えはなく、北海道や東北と異なる自らの個性を見つけられずに時間が過ぎた。

 雪が降り積もるこの地域で、8000年前から先人たちが生活していたことを知ったのは4年前のことだ。ワーキンググループに集まった学芸員から出てきた話をもとに長い冬を過ごすための発酵食文化など、雪国ならではの知恵を財産として打ち出す方針が決まった。

▲『SAKURA QUALITY』の調査員研修の風景。世界中の旅行者に、質の高い日本の観光サービスの情報提供に今後も力を入れていく

 『雪国A級グルメ』は、食の品質を保証する評価システムだ。添加物を使わず、地域の食材を使った料理を出す飲食店やホテルを、星の数で評価する。インバウンド客の誘致に向けては、地域内の宿泊施設の品質評価を第三者機関が発信する『SAKURA QUALITY』という認証システムの導入を決めた。調査項目は300に及び、事前情報提供のあり方、サービス内容、外国人対応などが評価される。

 これらの活動が、地域から全方位的な賛同を得ているわけではない。民宿、ホテル、旅館などの間でインバウンド集客に対する認識に差があるため、一致団結して受け入れ態勢を整えることが難しいからだ。しかし、参画施設のインバウンド受入れ態勢整備にたいする意識は確実に高まっている。

 品質認証制度は、世界中の旅行者に、質の高い日本の観光サービスの情報を提供し、安心で快適な旅行を楽しんでもらうために導入を決めた。外国人観光客のために受け入れ環境の整備が必要という問題意識から始めた。

今伝えたいこと

井口 智裕代表理事

 民間主体で地域づくりに取り組む組織として評価されてきましたが、民間主体ゆえ、地元自治体が支援に消極的という課題はあります。顧客視点を重視するため、観光協会や商工会など平等を原則とする組織からは、一緒に活動するのが難しいという声も聞かれます。しかし、事業者の意識啓発や経営改善に対する意識に変化が生まれつつあります。


法人名:(一社)雪国観光圏
設立年:2013年4月
所在地:新潟県南魚沼郡湯沢町大字湯沢2431-1

参加県・企業:魚沼市、南魚沼市、湯沢町、十日町市、津南町、みなかみ町、栄村、4CYCLE、滝沢印刷、自遊人、第四銀行営業本部兼地方創生推進本部コンサルティング推進部、(一社)観光品質認証協会、コラボル、(一社)越後湯沢温泉観光協会
年間延べ宿泊者数:国内 343万人(2017年)※海外は測定していない地域があるので非公表

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