「いわき市」よりも「スパリゾートハワイアンズがあるところ」と言われてピンとくる人の方が多いだろうか。2006年に公開された映画「フラガール」の舞台は1965年の福島県いわき市。炭鉱の町として成長した町が、炭鉱の閉山により収縮していく危機の中、ハワイアンリゾートを建設し再生していく話だ。
化石もまた、いわき市の魅力の1つだ。2018年10月、市内にある博物館「いわき市石炭・化石館ほるる」に首長竜の『フタバスズキリュウ』の化石が展示された。この化石が発見されたのは1968年10月6日。当時高校生だった鈴木直(ただし)さんが発見し、化石ブームが起こった。2018年、その化石が50年ぶりにいわき市に帰ってきた。
温泉があり、国宝「白水阿弥陀堂」があり、地元の海で捕れる魚介類は「常磐もの」としてブランド化している。東日本大震災の影響は甚大だったが、観光の足も徐々に回復してきた。先日市内で行われた、『クマガイソウ』などの花の群生を見て回る体験型ツアーには、多くの人が参加した。
市の観光政策を率いるのは、観光協会や地元交通会社など364団体が参加する、いわき観光まちづくりビューロー(福島県いわき市)だが、ノウハウに乏しく、マーケティングも手探りだ。総務課の鹿崎耕司課長は「効率よくプロモーションをかけることが重要だが、マーケティング専門のスタッフもおらず、雇う資金もない。プロモーションも『広く浅く』で終わってしまう。今は、私も含めたスタッフがマーケティングを学んでいる最中」と話す。
かつて閉山が相次ぎ活気を失っていった時代があり、現在は震災で甚大な被害をこうむった。地域一体となり活気を取り戻した頃を知るからこそ、危機を乗り越えようと活力が湧くのかもしれない。「地元が一丸となり町の活気を取り戻した物語は、震災からの復興を目指す今に似ている」(鹿崎課長)
今伝えたいこと
井上 直美会長
市内観光施設の来場者数は東日本大震災前の75%くらいで、横ばいが続いている。震災から8年がたったが、まだまだ風評被害は続いている。観光まちづくりはすぐに結果が出ないことが多く、スタッフも苦労している。
2019年は「観光まちづくりビジョン」を策定し、中長期的な事業展開を図るほか、観光サイトやネットショップのリニューアル、デジタルマーケティングの強化などを通して、風評の払拭と観光交流人口の増大をさらに進める。会員や各団体との連携・意見交換を密にして、事務局のさらなるレベルアップを目指したい。
設立年月:1993年4月(法人化)
所在地:福島県いわき市常磐湯本町向田3-1 いわき市石炭・化石館内
参加自治体・企業・団体:常磐興産、いわき湯本温泉観光協会、常磐交通など364団体
年間延べ宿泊者数:国内 73万6388人(2017年いわき市観光統計より)