かながわ西観光コンベンション・ビューロー(神奈川県小田原市)は、神奈川県西部の地域経済や観光振興、スポーツ文化振興を目的として2016年6月に設立した。加盟するのは小田原市や箱根町など神奈川県西部の2市9町と観光協会、地元企業だ。
設立によって大きく変わったのは、参加する各地の観光データの蓄積だ。月に一度情報交流会を開き、各地の観光情報や観光素材を取りまとめるとともに、各市町のインフラ整備の状況や観光入込客数、参加する企業の営業方針・活動内容を全体で共有。これまで見えなかった広域の観光情報を可視化することができた。
中でも重要なのは観光入込客数だ。各地の宿泊客数などを基としたアバウトなデータではあるが、エリア別の動向が分かることで、次の課題も見えてきた。効果的な集客方法は何か、観光客視点で見たときに各地の施策に間違いはないか、さらに正確なデータを収集するために観光現場での調査は徹底できているか、といったような内容だ。
組織の前身となったのは、2014年10月に小田原市と箱根町、小田原市体育協会、小田原箱根商工会議所が設立した「東京オリンピック神奈川県西部連絡会」だ。2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けたスポーツ振興のため結成された組織だが、参画する行政や観光協会間での連携は円滑に進まなかった。参加する誰もが連携のもろさを認識し、多くの自治体・企業を巻き込む広域連携の基盤は急ピッチで進められ、かながわ西観光コンベンション・ビューローは誕生した。
今後は域内イベントの視察など観光調査を進めるとともに、海外へのプロモーションや体験メニューの造成に取り組む。2019年にはラグビーワールドカップに向けた豪州代表キャンプの誘致、2020年6月にはサイクリング大会の「かながわ西地域ファンライド」が開催予定となっており、海外メディアやインフルエンサーを招へいするなどしたプロモーションを実施する方針だ。スマホゲームを活用したデジタルスタンプラリーなど回遊促進事業を行う予定もあるという。「DMOとして、こうした情報を発信するだけでなく、企画や新たな人材の参画、交流促進に関わっていきたい」(古川達高代表理事)
今伝えたいこと
古川 達高代表理事
交通手段の発達により、今まで宿泊を必要としていた目的地でも日帰り可能になるなど、地域観光が大きく変化している。縦割りの行政環境を、民力の活用で『点から面』にいかにつなげていくかが、私たちの仕事だと確信している。各地の担当者の企画も、個別に戦っているためが故に発信力やネットワークが弱く、尻すぼみになりがちな状況である。
世界から見たら日本は1つ。日本から見ても、神奈川は1つだ。民間の力を、行政の力でさらに広い範囲で生かしていける。そんな組織にしたいと考えている。
設立年:2016年6月
所在地:神奈川県小田原市栄町1-1-8
参加県・参加県・企業:小田原市、箱根町、松田町、湯河原町、真鶴町、大井町、中井町、南足柄市、山北町、開成町他、民間企業・団体48社
オブザーバー:神奈川県県西地域県政総合センター
年間延べ宿泊者数:国内外総数 559万1000人(2014年)