日帰り客が多く、宿泊数が伸びない。「京都に来たついでに訪れる観光スポット」というこれまでのイメージを、「泊まって1日を過ごす観光地」に塗り替えることが、おばま観光局(福井県小浜市)設立以来の課題だ。紙媒体、観光情報サイト、イベント開催、着地型ツアーや体験プログラムの開発などに年間1300万円を使い、観光地・小浜の情報発信を行うが、まだ、結果には結びついていない。
20~30年前は、若狭湾まで海水浴に訪れる関西からの宿泊客で活気があった。今も訪れる50代以上の既存顧客は、当時からの宿泊客が多い。観光局がターゲットとしているのも彼らだ。
しょうゆ干し、ささ漬け、へしこ、なれずしといった地域特有の加工食や、リアス式海岸がつくり出す自然、京都につながる『鯖街道』に並ぶ寺社めぐりなど、行動範囲は広い。訪れる時期も夏だけでなく、子供や孫を連れてやってくる。
重要伝統的建造物群保存地区に指定された町家を1棟1000万円をかけて改修し、一棟貸しの宿泊施設として運用を始めた。現状は土曜日以外は空室が多く、稼働率の改善は喫緊(きっきん)の課題だ。
2012年から始まった「てんこもり小浜フェスタ」は祭り、食、文化、体験型プログラム市内各地で提供するイベントで、市街から2カ月間で10万人が訪れる。事業者間の連携は年々強まり、関連イベントが増え始めているのは明るい兆しだ。
今伝えたいこと
朝倉 昌也代表取締役副社長兼企画・管理室長
京都や金沢のような観光地の経験がないだけに、観光客に慣れていない市民もいます。観光まちづくりの政策に対する温度差が市民の中にもあります。一方で、小浜単独で大規模観光地に肩を並べていくのも難しいでしょう。県や若狭湾を囲む周辺自治体と協力する必要があります。組織としては、道の駅若狭おばま、食事処浜の四季、町家・古民家事業、新商品開発&EC事業を通じて黒字化を保っています。
設立年:2010年4月
所在地:福井県小浜市和久里24-25-2
参加県・企業:小浜市、若狭おばま観光協会、小浜商工会議所、そともめぐり、若狭箸工業協同組合、若狭農業協同組合、小浜信用金庫、小浜市漁業協同組合、れいなん森林組合、三福タクシー、大和交通、地域経済活性化支援機構(REVIC)、福井銀行
年間延べ宿泊者数:国内 14万5000人/海外 4220人(2016年)