カナダ在住記者の引っ越し談、トロントからカルガリーへ @カナダ・カルガリー【11月5日/新型コロナウイルス 世界の反応・現地レポ】
- 2021/11/11
- カナダ, 新型コロナウイルス世界の反応, 新型コロナウイルス関連記事
カナダでは10月30日から、長距離鉄道や客船、国内の空港を利用する国内線および国際線の利用者は、新型コロナウイルスのワクチン接種証明の提示が必要になった。ワクチンの接種対象である、12歳以上の84.2%は接種を完了しているが、政府は接種率の向上や感染拡大を予防を目指すためだと発表した。
ロックダウンが終わり、新型コロナと共存する政策が進む中、カナダ在住の記者がトロントからカルガリー近郊に引っ越しをした。8月下旬に引っ越しが決まってから、10月上旬に新居に到着するまでをレポートする。
コロナ下でバーチャル内見が一般化、手続きもオンラインで完結
8月下旬、転勤のため1カ月ほどで移動することが決まってから、すぐに新居と引っ越し業者を探し始めた。長引くロックダウンや在宅命令により、国内ではバーチャル内見が一般化していた。写真や動画、3Dツアー、ビデオ通話を活用して物件を確認したり、電子署名で契約書を交わしたりと、オンラインのみで完結する。トロントからカルガリー近郊までは3000キロメートル以上の距離があり、事前に足を運ぶことが難しかったので、長距離の引っ越しには欠かせない仕組みだと感じた。
州内や近郊向けの引っ越し業者は多数あるが、長距離に対応するのは数社に限定される。長距離の場合は、相乗りとプライベートの2種類から選択できる。相乗りはプライベートより安価だが、複数人の荷物を順番に運ぶため、スケジュール調整に時間がかかる。トロントからカルガリー近郊まで、相乗りは2週間ほどで荷物が届き約15万円、プライベートは1週間以内で約70万円だった。国土の広いカナダでは数日かけて運転するため、人件費やガソリン代などが高額になるのだろう。
カナダの一般的な賃貸物件は、60日前に契約解除をオーナーや管理会社に申し出る。契約内容にもよるが、交渉次第では1カ月単位の支払いを日割りに変更できる場合もある。契約の解除を申し出た後は、契約期間であっても、新しい入居者が内見に来ることは珍しくない。内見希望の連絡を受けたら、基本的には受け入れる必要があるからだ。住んでいる人に直接質問できるので、住居や近隣の情報を手に入れることが可能だ。
引っ越し当日までの期間は、梱包と手続きに追われた。引っ越し業者は相乗りを選択したが、何時に荷物を受け取りに来るのか、2日前まで分からなかった。同じ日のフライトは避け、フライトの前後は空港付近のホテルに泊まった。コロナ下では日本国内同様、航空チケットは追加料金なしで日程が変更できるようになっている。
空港は非接触サービスを強化、効率化により混雑を回避
チェックインや預け入れ荷物のタグ印刷は、ウェブや空港の自動チェックイン機で自ら行う。事前に搭乗者が用意することで、空港では非接触でサービスが提供できるよう工夫されていた。予約時のチケットには、コロナ以前よりも早めに空港に到着するよう記載されていたが、非対面のチェックインで効率化したことで従来よりもスムーズだと感じた。10月上旬はワクチン接種の証明を提示する義務がなかったので、荷物検査のみで搭乗できた。
利用したエアカナダの機内では、飲食時を除いてマスク着用が求められ、マスクや除菌シートなどがまとめられたキットが配布された。飲料はペットボトルや缶のまま提供された。座席は満席ではなかったが、8割は利用されている状況だった。国内線のため、到着後は荷物を受け取るのみで、検査などはなかった。
カルガリーの空港から新居に着いた後は、さまざまな変更手続きを行った。州によって健康保険や運転免許証のシステムが異なるため、それぞれ変更しなければならない。コロナ下では、従来よりもプロセスに時間がかかるので、有効期限が切れても一定期間は使用できるそうだ。ワクチン接種の証明書も州により内容やデザインが異なるので、他州で受けた場合は書類の書き換えが必要になる。
カナダ最大の経済都市であるトロントと比べて、カルガリー近郊の新居周辺は移民が少なく、昔から住んでいるカナディアンが多いようだ。マスク着用や社会的距離を確保しながらも、道や店舗などあらゆる場所で、気軽に声を掛け合う文化が根付いている。大都市と比べて人口も少ないので渋滞もなく、店舗も空いていて落ち着いた雰囲気だ。
引っ越し荷物は、相乗りのため一部が届かないことを懸念していたが、2週間ほどで無事に届いた。トラックの運転手は、トロントよりさらに東部に位置するニュー・ブランズウィック州から運転して来たそうで、バンクーバーのあるブリティッシュコロンビア州まで、5000キロメートル以上を運転するという。1カ月ほど勤務した後は、数週間の休暇があるそうで、家族との再会を楽しみにしていた。家具のない2週間はサバイバル生活だったが、日本とは異なる引っ越しの文化を体験して、カナダ生活に深みが増したと感じた。