皆さん、中国の「旧正月」という言葉を聞いたことがありますか? これは中国独自の文化で、今でも中国では旧正月というものが暦の上で大切な意味を持っています。そもそも中国では1月1日を新年とする新暦と、2月を新年とする旧暦の2つがあります。日本の皆さんにとって正月といえば1月1日だと思いますが、中国人は1月1日を「春節」と呼び、正月といえば「旧正月」のことを指すのです。旧正月は年によって日付が変わるのですが、今年は2月11日がいわゆる大晦日、2月12日が元旦でした。この旧正月期間は中国人にとってはお正月なので、中国人の多くの人は年末年始休暇になります。今年は2月11日から17日までが長期連休という形になりました。同じ「正月」なので誤解されがちですが、中国の正月といえば旧正月のことを指すということを覚えておいてください。
日本人が誤解しがちなことといえば、料理もそうでしょうか。日本でもたくさんの中華料理を日常的に口にすることが多いと思いますが、実は日本の中華料理の多くが中国のものとは全く違うものなのです。
日本では「中華丼」、「冷やし中華」など料理名に「中華」と付くものがたくさんありますが、そのほとんどは日本オリジナルのもので、中国にはありません。「冷やし中華」といえば中国にも冷たい麺の料理で「冷麺」がありますが、これは唐辛子やパクチー、ピーナッツなどを使った料理で、日本の冷やし中華とは全く違うものです。もし中国人が冷やし中華を食べたとしたら、「なんだ、この酸っぱいサラダ麺は?」と驚くことでしょう。
日本では「天津飯」や「天津甘栗」など「天津」という名がついた料理も多いですが、中国にはこうした料理もありません。甘栗はありますが、中国では秋に食べるもので、もっと安価で気軽に食べる料理です。どうして料理名に「天津」と名付けられるようになったのかは諸説あるようですが、天津には天津港という伝統的な海外出荷の拠点があり、天津港から日本に輸出されていたことから、中国の代名詞として「天津」と名付けられるようになったのではないかといわれています。
私も日本の中華料理が好きで、特に冷やし中華は大好物ですが、中国で日本の冷やし中華を出す店はほとんどありません。上海の自宅周辺でも、半径5キロメートル以内に1軒しかないと思います。その店の経営者は日本人。それほどに、日本の中華料理と本場の中華料理には違いがあるのです。同じ中華料理と侮るなかれ、アフターコロナで中国旅行をするときには、ぜひグルメを堪能してもらいたいと思います。
最後に、冒頭で旧正月が連休になるという話をしましたが、その一方で、春節は休みが短かったり、旧正月の前後の土日が平日扱いになるなどといったことが中国では起こります。これは、中国では年間の休日数が決められているためなのです。日本では年によって年末年始の連休が長かったりしますが、中国ではその分どこかの休みが平日になります。「中国は休みが少なくて大変」と思うかもしれませんが、一方で、中国では残業時間もしっかりと定められており、平日の残業はほとんどありません。そのため、日本よりも平日の時間割りがきちんとした生活を送っています。皆さんはどちらの生活がお好みでしょうか。こうした生活の違いを踏まえて中国の人と接すると、新たな発見があるかもしれませんね。