海外バイヤー途絶える対策急務 @神戸国際宝飾展
- 2020/9/2
- 国際宝飾展
会期:2020年8月9日(日)~11日(火)
会場:神戸国際展示場
主催:リード エグジビション ジャパン
出展者数:224社
来場者数:5919人
出展者層:真珠・ダイヤモンド・色石・アクセサリー・宝飾関連製品などのメーカー、卸
来場者層:宝飾小売、セレクトショップ、通販・ネットショップ・一般
宝石、貴金属メーカーと販売会社が集まる展示会「神戸国際宝飾展」では、ここ数年出展企業の売り上げを支えてきた中国人バイヤーの来場が途絶えた。宝飾関連の展示会は、会場で活発な取引が行われるのが特徴だが、今回、出展者からは取引につながらないという声が多く上がった。主催のリードエグジビションジャパン(東京都新宿区)は、日本に在住しながら中国本土に販路を持つ「ソーシャルバイヤー」と呼ばれる在日中国人を多数集めたが、想定していたほど商売につながらなかった。新型コロナウイルスの感染拡大以降、海外バイヤーを集めることは難しくなっており、状況が変わるまでにはしばらく時間がかかりそうだ。美容、健康産業や、製造業系の展示会では、ここ数年買い手として中国人バイヤーの存在感が増していたため、主催者は対応策に追われることになりそうだ。
在日中国人誘致するも反応イマイチ
リード社によると、3日間の総来場者数は5919人だった。前年の半分以下に減ったものの、10日前に大阪で開催された「関西ホテル・レストラン・ショー」の来場者が3500人だったことから、集客に関して一定の成果はあったと言える。だが、出展企業からは厳しい声が相次いだ。その多くは、中国をはじめとする外国人バイヤーの減少に対するものだ。ジュエリーメーカーの碌山(東京都中央区)には、初日こそブースに来場者が集まったが、大半が日本人で一般消費者も多かった。「昨年は7割のブース来場者が外国人で、売り上げも良かったが、今年は厳しい」(飯島弓太郎さん)
国内で開催される宝飾展では、数年前から外国人バイヤーが主要な買い手として存在感を増していた。多くの出展者が彼らと取り引きすることを目的にしていたため、メインの商談相手がいないことに対する落胆を口にした。
新型コロナウイルスの感染拡大により外国人の入国に対して厳しい制限がかけられていることから、外国人バイヤーを来場させることが難しいことをリード社も把握していた。そのため、日本在住のソーシャルバイヤーを集め中国向けの販路につなげようとしたが、宝石を扱った経験の無いバイヤーが大半で商売が成立しなかった。「ソーシャルバイヤーの宝石に対する知識は一般消費者と何も変わらない。プロが仕入れをする場にはふさわしくない」と話した真珠を卸売する覺田真珠(三重県伊勢市)、覺田譲治代表の表情は厳しかった。
リードオンライン商談拡充を検討
一方で、厳しい市況での販路開拓をデジタルで支援する出展者は成果を感じていた。宝飾品買取販売や、宝飾業界向けシステムを開発するセルビー(東京都台東区)は、ウェブで販売するための画像補正アプリや複数のECサイトや実店舗の在庫を管理するシステムを展示した。オンライン販売を始める企業も多く、すでに始めているものの成果が出ていない企業からの相談もあった。「1日20人ほどと話せた。出展の目的は果たせた」(山本真也さん)
海外バイヤーの減少や、デジタルシフトに苦労する業界各社の状況に対して、リード社も手を打ち始めている。今回、オンラインで海外バイヤーと商談ができる制度を導入した。「海外バイヤーの重要度が宝飾展において極めて高いことは十分に理解している。今回の対策が出展者に例年通りの成果を提供できていないことも把握している」(岡部憲士取締役)一方で、「出展企業の8割が来年の申し込みを済ませた」(岡部取締役)と話し、開催に対して一定の支持を得た手応えを感じたようだ。