豊富な食材で観光客を呼び込む
下仁田町観光協会(群馬県甘楽郡)が法人化したのは2014年だ。富岡製糸場が世界遺産に登録された年で、町内にある蚕種貯蔵施設「荒船風羽穴」も、世界遺産の構成資産の1/つとなった。
だが、手放しで観光客が集まったわけではない。下仁田町はネギやコンニャクで知られているが、町内の観光スポットは知名度も低い。町の人口は約7500人。過疎化の進む中山間部の町には、観光の新たな呼び水が必要だった。
協会が最初に取り組んだのが、観光の玄関口となる「道の駅しもにた」に協会の事務所を設置することだった。町営バスと高速バスを乗り入れ、協会のスタッフを配置し、販売所の売り場面積を2倍に拡張して、土産品の販売促進につなげた。
新商品も開発した。下仁田といえばネギとコンニャクだが、豊富な自然を有する土地のため、ほかにもさまざまな野菜・果物が育つ。町内には牛肉や乳製品の人気が高い神津牧場もある。こうした食品の魅力を打ち出した。
下仁田産の食材をフルコースで味わうイベント「美食会 下仁田プロモーション」では、有名シェフが下仁田産の食材をつかった料理を振る舞い、開発エピソードなどを紹介した。参加者には地元の温泉の割引券を配布し、町内の観光スポット、中之嶽神社の宮司からのメッセージを披露するなど、町全体でもてなした。外資系ホテルも神津牧場の商品を扱うようになった。
松本秀信事務局長は「当初は『こんな田舎町に観光客が来るのか』と疑問に思う住民が多かった。美食会で自分の手で作った食材がすてきな料理になり、参加者が喜ぶ姿を見て、感動して泣いている農家の方もいた。この町が観光で発展し、その効果を経済的に実感できるようにするのが私たちの仕事だ」と話した。
今伝えたいこと
上原 康廣会長
地元のこんにゃくメーカーを経営しており、行政とも観光事業とも違う立場にいた。観光振興についてはまったくの素人だ。下仁田で生まれ育ってきたが、観光という視点で地域を見たこともなかった。
だが、DMOの長としてはそれでいいと思っている。小さな町で、観光の取り組みが成果を上げるには時間がかかる。近隣地域との連携も欠かせない。マーケティングやプロモーションのことは、ノウハウと経験を持った観光のプロであるスタッフに任せる。私の仕事は、しがらみのない合意形成や町の稼げる仕組みを創ることだ。そんな視点で、愛する下仁田の元気を観光からとり戻すことを目指し、日々現場にアドバイスしている。
設立年月:2014年8月12日
所在地: 群馬県甘楽郡下仁田町大字馬山3766-11
参加自治体・企業・団体:下仁田町ほか88社・団体
年間延べ宿泊者数:国内 4300人/海外 約100人