観光業と農業の良好な関係作り【全国DMO巡り Vol.5】(一財)丘のまちびえい活性化協会

▲美瑛川のほとりにある「青い池」は、アップル社のOSで壁紙に採用され、美瑛の名を世界に知らしめた

 美瑛川のほとりにある「青い池」が、2012年、アップル社が提供するMacOSの壁紙に採用され、世界から注目を集めるようになった。以来、人口1万人の美瑛町に、台湾、香港、中国、韓国を中心に年間160万~170万人の外国人観光客が訪れる。

 だが、課題は多い。第1に、経済的恩恵を地域が得ていない。宿泊客は年間4万人程度で、これを増やすことが喫緊の課題だ。夏場以外の観光客が少なく宿泊施設の稼働率は年間を通すとまばらだ。

 第2に、急増した観光客が農地に立ち入ることによる、農業被害が甚大だ。観光客のマナーの悪さに閉口した農家が、観光名所の木を切り倒す事態に発展した。

▲通過型観光地から滞在型観光地へ。観光客の滞在期間を増やすための取り組みの一環として夏に集中しがちな観光客に通年訪れてもらうための滞在型プログラム。雪で真っ白な丘の上を歩く『スノーシュー』

 丘のまちびえい活性化協会(北海道上川郡)が、年間を通じて観光客を集めるために始めたのが、ガイドをつけて畑を歩く『フットバス』や、農作業を体験する『グリーンツーリズム』、雪で真っ白な丘の上を歩く『スノーシュー』など滞在型プログラムの充実だ。 農業保護では、4カ国語表記の注意看板を立て、ロープを張り、観光パトロールを巡回させて注意を喚起する。

▲美瑛の観光資源である農業の景観を維持していくために農業者と観光事業者が連携していく必要がある

 農業被害に対して、これまで行政は積極的ではなかった。農家の私有地で、特定の畑に公費を使うと公平性に欠けるという考えからだ。行政ではないDMOの立場を生かし、マナー啓蒙(けいもう)活動を強化することを目指す。


今伝えたいこと

泉 剛生事業係長

 地域をマネジメントすることは、DMOの本来の理念です。農業と観光が共存できる「観光まちづくり」を実現するためには、農業と観光の心地よい関係をつくることが重要です。DMOで生み出した利益を、畑を守るための環境整備や観光マナーの啓蒙活動に充てられれば、美瑛のDMOとして存在する意義が高まると思っています。


法人名:(一財)丘のまちびえい活性化協会
設立年:2012年10月
所在地:北海道上川郡美瑛町本町1-5-8

参加自治体・企業:美瑛町、美瑛町農業協同組合(JAびえい)、美瑛町商工会、美瑛町観光協会、美瑛物産公社、美瑛町建設業協会、美瑛町森林組合
年間延べ宿泊者数:国内 19万人/海外 4万人(2017年)

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