カード制作事業はウェブ広告が好調、アプリ制作事業は電話営業【リード獲得100本連載】研美社(大阪市)

アプリの制作サービス『ラポレル』
研美社(大阪市)

 プラスチックカードを製造販売する研美社(大阪市)は、ウェブ広告を軸に月に200件の新規顧客を獲得する。新型コロナウイルスの影響で売り上げは減少したが、営業利益は微増した。アナログ頼りの状況を変えるため、アプリ制作サービス『ラポレル』の提供を、2021年に始めた。新旧それぞれの商材について、営業施策と課題を、宇野伸弥営業部長に聞いた。

―営業活動、プロモーションの実態を教えて下さい

 既存事業であるプラスチックカードの営業では、ウェブ広告で新規顧客を獲得しています。リスティング広告に月70万円を投下しています。そこから、プラスチックカードやICカードなど商材ごとに個別に制作した6つのサービスサイト、あるいはコーポレートサイトに誘導します。サービスサイトではブログの更新を日々行い、お客様の声、Q&A、ウェブミーティングの予約窓口を設置し、専任担当をつけています。そのほかに、ディスプレイ広告、ウェブページ掲載広告、少額ながらSNS広告も行っています。印刷業界の組合から紹介を受けることもあります。新規顧客の問い合わせ件数は月200件です。

 成約率は70%の商材もあれば、20%のものもあり、全体で4割超えといったところです。広告費予算は1500万円です。ここに、ハガキDM、紙媒体雑誌広告、プレスリリース、業界誌広告、チラシ・パンフ作成費なども含みます。

 アプリ制作サービス『ラポレル』の営業では、顧客ターゲットとなる業界の団体会員リストや、フリーペーパーに掲載された店舗をリスト化し、電話営業を行っています。広告やダイレクトメールも使いましたが、反響率が低く電話に切り替えました。営業を外部に委託することも検討しましたが、今は自社の営業担当者4人が担っています。2021年5月にサービスを開始しましたが、既存事業であるプラスチックカードと営業手法が異なるため、効果が出ておらず課題を感じています。

▲既存事業のプラスチックカード

―メイン商材の市場動向はどうですか

 同業他社が30社程度あり、数年前から倍増した印象です。市場は毎年厳しくなっています。我が社も、新型コロナの影響下で、イベントパスや飲食店のメンバーズカードの需要が減り、売上が11%減少しました。一方で、営業利益は微増しました。コワーキングスペースやサテライトオフィス、サウナ、セキュリティ用のICカードといった新しい需要が生まれたことや、ウェブ広告で購入前提の人へ訴求できたことが理由だと分析しています。

―ウェビナーを毎月開催しているということですが、手応えはいかがですか

 インサイドセールスの充実を目指して、1年前から毎月開催しています。印刷会社、広告代理店、システム会社など、自社で保有するリストへメルマガを配信し、毎回5〜10社、最大20人程度の方に、参加して頂いています。

 当初は商品紹介に終始していましたが、回を重ねるごとに参加者が減少したため、「illustratorの使い方」「PowerPointの応用術」といった、ターゲットとなる企業の需要に合わせたテーマを設定しています。エコ商材、メタルカードなど、他で扱われることが少ないテーマへも人が集まりやすいと感じています。

リアル展示会から8件の商談、対面が強い印刷業界

―リアル展示会の出展効果はありますか

 「JP2021・印刷DX展」では、ラポレルとスマート名刺を展示しました。前回の2019年と比べて来場者は大幅に減りましたが、新規顧客80社、アポイント20社という目標を達成できました。すでに訪問も始めており、印刷会社4件、紙商社1件、その他3件と、合計8件の商談が進行しています。新型コロナ下でも会場に足を運ぶなど、印刷業界はリアルが強いと実感しました。小間代やブース設え、ノベルティ等で1回100万円前後、年2回で200万円の予算を組んでいます。

 今年は、DXに関する情報を求める人が目立ちました。DXサービスを導入したいが、手探り状態の企業が多いため、業界の中で牽引(けんいん)する存在になることを目指しています。

―オンラインイベントへの参加予定はありますか

 オンライン展示会の出展営業を受ける機会は多いです。2021年2月に「page」に出展した際に、オンライン出展も勧められましたが、高額な費用に対する効果に疑問があり見送りました。

プッシュ型営業のノウハウを持つ人材の採用が課題

―現在はどのような営業体制ですか

 営業部は、部長、大阪2人、東京1人の4人でインサイドセールスをしており、フィールドセールスは実施していません。今後、東京で、『ラポレル』の新規顧客を開拓できる人を、1人採用したいと考えています。正社員にこだわらず、成果を出せるなら兼業や副業でも構いません。

―営業活動の課題は何ですか

 従来の有形商材とは異なり、無形のサービスを販売するには、受け身ではなく自ら発信する「プッシュ型の営業」が必要だと考えています。しかし、自社にノウハウを持つスタッフがいないので、早急に解決するべき課題だと認識しています。

 年間の広告予算は1500万円ですが、商品開発に資金を投入したいので、少ない費用で効果を最大化する方法を模索しています。新型コロナが落ち着けば、需要は少し戻る見込みですが、アナログ商材が先細りになるのは避けられません。デジタルに対応したサービスを販売する営業力をつけることが、当面の目標です。

 一方で、プラスチックカードに対する問い合わせが毎月200件あるので、その対応に追われているのが実態でもあります。人的リソースの整備や、営業の生産性を高めるための工夫を検討していきます。

▲話を聞いた研美社(大阪市)営業部の宇野伸弥部長

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