マーケティングシステム提供のシャノン 資料請求5倍以上に
- 2020/5/18
デジタルマーケティングの支援サービスを提供するシャノン(東京都港区)では、新型コロナウイルスによる自粛要請が始まって以降、資料請求件数が通常の5倍に増えた。特に、ウェビナー、オンラインカンファレンス、バーチャルイベントに対する反響が大きい。ウェビナーに対する問い合わせはITを中心に幅広い企業からのものが多いが、オンラインカンファレンスやバーチャルイベントには、イベント支援会社やイベントを主催する企業の関心が集まっているという。中村健一郎社長に聞いた。
気軽な問い合わせが増加
ーバーチャルイベント、オンラインカンファレンス、ウェビナーに対する反応はいつから増えたのか。
問い合わせや資料請求件数が増えたのは、3月末からだ。6〜7月にプライベートショーの開催を予定するIT系の企業などからの反応が早かった。4月中はリアルイベントとオンライン両方の可能性を検討するところが多かったが、連休前には、オンラインの単独開催を考える人が大半になった。だが、コロナ以前に比べ、資料請求を気軽に行う人が増えた。これまで資料請求をしていたのは、様々な業務を優先して情報を取りに来た人だったが、ウェブ以外に情報取得機会がない今は、とりあえず資料を取り寄せる人が多い。各社の資料を読んでから検討を始めるということだ。
ー問い合わせをしてくるのはどのような人たちか。
ウェビナーに関してはIT企業が多く、元々の当社の顧客属性と大きく変わらない。オンラインカンファレンスやバーチャルイベントに関しては、プライベートショーを開催する企業や、彼らからイベントの企画や運営を委託されているイベント支援企業が多いのが特徴だ。グローバルに事業展開する外資企業の大半は、リアルイベントの開催を年内取りやめる決定を出している。その代替策として、バーチャルイベントやオンラインカンファレンスに行き着いた人が多い。
ーバーチャルイベント、オンラインカンファレンス、ウェビナーはどういうものか
バーチャルイベントは、3次元のコンピューターグラフィックスでつくったブースをオンライン上の展示会場に配置し、サイト訪問者がその中を歩くものだ。ブースにある商品をクリックすれば動画案内や資料を手に入れたり、チャットやビデオチャットで担当者につなぐこともできる。国土の広いアメリカでは一部で強い需要があり、当社も8年前から商品として提供していが、これまでは、それほど反響はなかった。
オンラインカンファレンスは、数千人規模の聴講者を集めるカンファレンスをそのままオンラインに移行するシステムだ。ウェビナーはもっと規模の小さなセミナーをオンラインに移行するもので、プロモーションやマーケティングの手段として使われることが多い。
自社の営業もウェビナーに移行 課題はリード獲得よりもクロージング
ーシャノンの営業はどのように変化したか
当社も、これまでは毎年春に大型展示会に出展し、5000〜1万件のリードを獲得してきた。今年は開催されなかったこともあり、新規リードの獲得はウェビナーにほぼ移行し、成果も得ている。だが、ウェビナーも気軽に参加できるため、これまでセミナーに参加した人たちとは関心度が異なる。ウェビナーの参加人数で、成果を判断してはならず、その中に当社が顧客対象とする人が何人含まれているかを見なければならない。
ー外出自粛下での営業に関して、課題はどこにあると考えるか
一番大きいのは、クロージングの難しさではないか。ある程度高額な商材を、電話やオンライン商談だけで売り切るのは難しい。当社でも、4〜5月に成約を目指していた案件が進まなくなっている。また、新規リードは獲得できても、その次に、問い合わせ客に電話で接触を試みるところで、障害が発生する。単純に電話が通じない。社用の携帯電話を持たない人も多く、その時点でメール対応以外の方法が絶たれる。オンライン面談の件数は増えているが、顧客側で対応できる人は限られているし、当社の営業担当も、相手の表情を見ながら話すことの難しさを感じている。
地方拠点の営業活動も難しい。遠隔対応をする時点で、近くにいる担当者が対応するという優位性が失われてしまう。また、地方では、通信回線の問題からオンライン商談ができないことも多い。