映像・音響機器レンタルのエージーエーコーポレーション(東京都板橋区)は、8年前から新卒生を毎年5人以上採用している。専門技術や知識を、採用基準に加味することはほとんどなく、「気配り」と「会社との相性」のみを見定めるという。
8年前から新卒採用
即戦力を求め専門学校卒業生を獲得する同業他社が多い中、エージーエーの新卒社員は四年生大学の卒業生が中心だ。学部は文学部や経済学部などバラバラ。バンドや演劇、学園祭の制作に関わった経験者が多いが、専門技術を持って入社した社員はいない。
「映像や音響の専門的な技術を発揮したい人には当社の仕事は物足りないだろう」金子みどり社長が採用の場で最も重視するのは、会社との相性だ。
気配りを何よりも大事にする社風は、異業種から参入した後発ゆえの産物だ。25年前、カラオケ機器のレンタル事業で創業し、イベントでの映像・音響機器レンタルが本格化したのは15年ほど前からだ。「当初は、機材は貸せても経験がなく、現場で学ぶしかなかった。せめて迷惑をかけないように、気配りを徹底して仕事をつないできた」(金子社長)
その一方で、実技試験も重視しているという。説明を聞いているか、わからなかったときに説明書を開くか、机を片付ける作業を手伝うか、といったポイントから相性の良い人材が見えてくるからだ。
今春入社した社員の配属は9月10日に決まったばかりだ。新人研修の後、企画営業、総務、商品管理、技術の4部所を1カ月ずつ研修してきた。
今年は7人入社したうち、2人が退職した。全員残る年もあれば、1人を残し他は全て退職してしまった年もある。ここ数年、5割以上残るようになり、定着率は上がった。現在社員は60人、アルバイトを含めると80人を超える。10年前に比べ6倍以上の大所帯となった。
目下の課題は、政府が月80時間以下とする残業規制への取り組みだ。遠方現場の出張に2交代制を導入するなどの試行錯誤に乗り出した。目先の業務効率や収益性は下がる上、残業代が減る現場社員にとってもありがたくない話だ。それでも社会の要請という外部からの強制をあえて好機ととらえた。
「この先、採用はさらに難しくなるからこそ、今いる社員が長く働ける環境を整えなければならない。特に、景気の良い今だからこそやらなければ」(金子社長)