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- 銚子市、廃校校舎活用で合宿客を誘致【スポーツと地方創生③】
▲廃校となっていた旧市立銚子西高校の体育館
スポーツと地方創生③
最多投手との出会い
スポーツタウンとして成長を重ねる銚子に、転機が訪れたのは、元プロ野球選手・木樽正明さんとの出会いです。木樽さんは昭和40年に銚子商業が夏の甲子園で準優勝した時のエースでした。その後、ロッテに入団し、1971年には24勝を挙げ年間最多勝投手となりました。銚子市民にとって有名な憧れの存在で、私にとっても雲の上の存在でした。
我々のNPOがサイクリングやトライアスロンで銚子を盛り上げようとしていた時、木樽さんは銚子に強い野球を復活させようと、戻っていらしたのです。私は知人のつてを頼りに木樽さんを訪ねました。会ったその場で意気投合し、2日後に廃校となっていた旧市立銚子西高校を一緒に視察しました。
木樽さんと私はスポーツ合宿の誘致を見込み、合宿施設をつくろうと考えていたのです。グラウンドの芝はきれいに刈られ、手入れが行き届いていました。「あとは合宿施設さえそろえば使える」と盛り上がりました。
建物には課題がありました。体育館は雨漏りがひどくいたる所にバケツが置かれ、床は腐食が目立ちました。キノコが生えているのも見つかったくらいです。それでも「この体育館が使えればなんとかならないかな」と思ったのを覚えています。
背中押したニーズ調査
木樽さんとの出会いから少したったころ、今度は千葉銀行の地方創生部長に会う機会に恵まれました。高校ラグビー部の同窓会がきっかけだったのですが、スポーツツーリズムの話をすると、「千葉銀行が考えていることと同じだ」と大いに賛同していただきました。
既存の建物を人気合宿施設に生まれ変わらせたR.Project(千葉県鋸南町)という会社があり、以前「稼働率3割で黒字になる宿泊施設」というセミナーを聞いたことがありました。同様に中古物件をリノベーションすればイニシャルコストや、建築費を抑えられると思い試算しました。その企画書を地方創生部長に渡し、さらに旧西高に誘ってスポーツ合宿所に改修する提案をしたのです。
時間がたつにつれ、千葉銀行も実現に向けて考えてくれるようになりましたが、前に進めるにはニーズ調査が必要だと言われました。銚子市役所に相談にいくと、産業観光部長が調査に予算をつけてくれました。これにより、関東近県の高校野球部700校にアンケートを送り、4割から回答を得ることができたのです。関係者の注目を集めたのは「新施設が設置された場合、合宿先の宿泊先として選択する可能性はあるか」という設問でした。私は回答が怖くて仕方なかったのです。ニーズがないとなった場合、企画が無くなってしまうからです。
結果は「ぜひ宿泊したい」が10.6%、「検討したい」が65%、両者を合わせると前向きな回答が75%に達しました。まだ図面もない状態でこの数字は、十分に可能性があると考えられました。結果に対して驚いていたのは、調査を担当したちばぎん総研も千葉銀行も同じです。銚子市も、手応えを感じたようで、実現に向けて大きな力となりました。
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