スポーツで地方に人を集める仕組みをつくる【スポーツと地方創生】

スポーツと地方創生

スポーツで地方に人を集める仕組みをつくる

全国各地でスポーツを地方創生の手段とする「スポーツツーリズム」の取り組みが活発になっている。スポーツで地域の産業を活性化させるとはどういうことか、(一社)日本スポーツツーリズム推進機構(JSTA・東京都港区)の中山哲郎事務局長に聞いた。

「ツアー」と「ツーリズム」

スポーツツーリズムとは、スポーツビジネスの一つです。現在、スポーツが地方創生、地域活性の役割を担うと注目が集まっています。
ツーリズムという言葉は日本語に訳しにくく、解釈が難しいかもしれません。かつて、バブル期の1980年代には「スポーツツアー」と呼ばれていたものがありました。スキー、ゴルフが隆盛を極めた時代で、当時は旅行会社や航空会社が国内のパッケージツアーを組み、あくまでも国内旅行者向けとして取引されるのが主流でした。
しかし、現在は海外からもスキーの観光客が訪れるようになりました。国内外の観光客は旅先で、その地域でしかできない体験、いわゆる「コト消費」に期待しています。また、従来の「ツアー」に比べると、「ツーリズム」は観光業者だけではなく、交流人口の拡大も含めた地域ぐるみの取り組みとなっていると言えるでしょう。
海外も含めて外部からの人の流入と交流に、スポーツをどう絡めていくか。これが、地域活性化を目的としたスポーツツーリズムです。

スポーツを観光の呼び水に

来年、2019年には「ラグビーワールドカップ」が迫ってきています。翌年の20年には「東京オリンピック・パラリンピック」、その翌年の21年には「ワールドマスターズゲームズ」が関西で開催されます。26年には愛知県で「アジア競技大会」の開催が予定されています。こうした状況を背景に、質的な向上も含め、観光としてスポーツをどう扱うかが、喫緊の課題です。
スポーツツーリズムはさまざまな機関や組織が横串で連携していかなければなりません。現在政府ではスポーツ庁、環境庁、文化庁の三庁が連携してスポーツ文化ツーリズムという枠組みで取り組んでいますが、実際に日本各地でスポーツツーリズムによる地方創生に取り組もうとした場合も、同じように横串の連携が必要となるでしょう。
たとえば現在の各地のスポーツツーリズムへの取り組みを見ると、大都市では大規模なスポーツ大会の誘致を中心に据えて観光振興につなげようと捉えていますが、地方ではスポーツを活用して人の流れや観光振興の仕組みをどうつくろうか、ということをポイントとして考えています。
この地方の取り組みの場合、これまで地方のスポーツ振興は教育委員会が担ってきましたが、スポーツツーリズムの場合は教育委員会の役割だけでは足りません。というのも、教育委員会が管轄するスポーツは、学校など教育の場におけるスポーツ環境の仕組みづくりですので、観光分野は含まれないのです。そのため、自治体がスポーツツーリズムで地域創生に取り組もうとするならば、新たにスポーツ振興課を設立し、独立してスポーツ振興に取り組んだり、民間事業者も巻き込むなど柔軟な対応が必要となり、実際にそうした自治体も出てきています。
次回に紹介する千葉県の銚子市はスポーツツーリズムにいち早く注目し、専門組織をつくりました。さらに宿泊施設を設け、より一層スポーツツーリズムに力を入れていこうとしています。この取組は世界的に見てもユニークと言えるでしょう。

〝従来型組織〟の脱却を図れ

地域の特性を生かす

地域のスポーツツーリズムのコアとなるのは、もちろんスポーツ資源です。地域によってスポーツ資源はさまざまで、プロスポーツがある地域もあれば、学校スポーツが盛んな地もあります。また、雪上スポーツが活発なところもあれば、マリンスポーツが盛んなところもあるわけです。
競技ごとに考えたときにも、各地に必要な環境が異なり、たとえば自転車イベント一つを取ってみても、陸上トラックがなくてもできる場合だってあります。各地がスポーツで地域創生に取り組む場合、そうした一つ一つの競技と、地域特有の産業や歴史、健康づくりと絡めれば、スポーツツーリズムとしての魅力が増すことでしょう。どんな地域においても、スポーツツーリズムで地域振興につなげる可能性はあるのです。

(一社)日本スポーツツーリズム推進機構
中山哲郎事務局長
1956年大阪市生まれ。79年に日本交通公社に入社。スポーツツアー企画のサン&サン関西を経て、アルベールビル五輪、アトランタ五輪、シドニー五輪、FIFAフランスワールドカップなど世界的大会に参画。現日本スポーツツーリズム推進機構の事務局長。


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