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- 観光客誘致で過熱するスポーツツーリズム
ユニークイベントを自治体が主催
今年6月25日に開催されたのが、大阪市を代表する観光名所の大阪城の東外濠を泳ぎ、城の外周をバイクとランで走るという一風変わったコースを回る「大阪城トライアスロン」だ。主催は大阪市や日本トライアスロン連合、大阪観光局などで、海外アスリートも招待する国際大会として多くの観客を集めた。
大阪市は「東京に『東京マラソン』があるように、大阪でも世界に通じるスポーツ大会を開きたいと考えた。大阪城を中心としたコースなので、選手も観客も、地元を楽しんでもらえると思った」と語る。
こうしたスポーツツーリズムで観光客を呼び込もうとする自治体が増えている。日本スポーツツーリズム推進機構の中山哲郎事務局長は「訪日観光客が増加する一方で、爆買いブームもひと段落し、新たな観光誘致策が求められている。特に重要なのは日本ならではの体験ができる『体験型観光』で、スポーツとの親和性が高い。近年は自治体が当機構に参加するケースも増えており、今後さらに過熱しそうだ」と語る。政府もスポーツツーリズムの推進に本腰のようだ。2012年に「スポーツツーリズム推進基本方針」が策定されると、16年3月には観光庁・スポーツ庁・文化庁の3庁が包括的連携協定を締結。スポーツ庁の鈴木大地長官は「大阪トライアスロンのように日本を代表する文化財でスポーツをするというのは世界的にも珍しく、人を集めるコンテンツになる。これまで文化財は荘厳なイメージが強く、スポーツ大会の会場にするなど無理だと思われてきた。3庁が連携することでこうした垣根が取り払われれば、スポーツツーリズムはさらに盛り上がる」と話している。
こうしたスポーツツーリズムに取り組む自治体が増えている理由には、従来の観光資源だけでなく、スポーツ施設や地域の自然環境を武器にできることにある。同機構の中山事務局長は「スポーツツーリズムというのは、大きな大会を開いて選手を集めるだけではない。キャンプ地として競技団体を誘致する、練習場を設けて定期的に地域を訪れてもらうなど、スポーツを通じて選手や観客がその土地を訪れ、観光などを通じて地域を潤すことが大切だ。そうした意味で、これまで地域の人たちだけが使っていたスポーツ施設を、いかにして外の人たちに使ってもらうか、官民が連携して考える必要がある」と語る。
さいたま市では11年10月に、スポーツツーリズムを推進する全国初のスポーツコミッション「さいたまスポーツコミッション」を結成。「さいたまスーパーアリーナ」や「さいたまスタジアム」のほか、市内にある体育館や球場を活用してキャンプの誘致や大会を開催する支援を行ってきた。同団体の金子芳久氏は「今では年間40件のスポーツ大会を市内に誘致している。さいたま市には首都圏や横浜などに比べて目立った観光スポットは少ないが、スポーツ施設は他の自治体よりも多い。スポーツで日本を訪れる人は滞在日数も長く、そのぶんお金も使う。国際大会が開かれると、多い時には400名の選手が参加するので、市に与える影響は大きい」と話す。近年にサイクリングの整備に取り組む自治体が多い。
中山事務局長は「マラソン大会は各地で開かれるようになったが、近年は大規模大会に統合される流れが見えている。一方、勢いがあるのはサイクリング。しまなみ海道のサイクリングは世界的にも有名だが、千葉県銚子市や他の自治体もコースを整備するなど、力を入れている。サイクリングは自転車や周辺用品などにお金がかかる競技なので、逆に言えば大会の時に地域に使うお金も大きい」と話す。
国際イベントニュース 編集部 長谷川遼平
2012年入社。賃貸住宅に関する経営情報紙『週刊全国賃貸住宅新聞』編集部主任。起業・独立の専門誌『ビジネスチャンス』にて新市場・ベンチャー企業を担当。民泊やIoTなど、新産業を専門に取材。