ベトナムで成功する日本のIT企業経営者 豊富なIT人材で世界を顧客に成長

 
  • 2018/9/2
ベトナムには日本のIT企業が多数進出する。その多くが、日本のIT企業から開発案件の一部を下請けとして引き受ける、外部引き受け業務だ。IT業界で『オフショア開発』と呼ばれるもので、世界的なエンジニア不足の状況に対して、安い労働力を武器に事業を拡大する。だが、成功する2社に共通したのは、安さよりも、優秀な人材を確保することへの注力だった。

大学と提携し専門家を養成

 ベトナムでは年間6万5000人以上のITエンジニアが社会に出る。ベトナム政府は2000年代初頭からIT産業での経済振興を目指しており、人材の育成と、IT分野に絞った海外企業に対する税制優遇などの誘致策を実行してきた。

infinity block hain Labs(ベトナム) 山本 純也代表

 「ベトナムトップクラスの大学でIT工学を学んだ人材だけでも毎年4万5000人いて、日本の1万5000人に比べ優秀な人材の供給量が多い」と話す山本純也氏は、ブロックチェーン技術の研究開発を行うinfinity blockchain Labs(ベトナム)の代表だ。2012年にベトナムに渡り日系IT企業の現地法人で『オフショア開発』の責任者を務めるなかで、高度IT人材の層の厚さを肌で感じたという。15年に現地で創業することを決めたのは、ブロックチェーンという先端分野で世界シェアを獲得するには、高度人材の確保で先んずることが勝敗を決めると判断したからだ。

 現在、230人いる社員の9割はベトナム人だ。昨年はIT工学系の大学でブロックチェーンの専門技術者を養成することを目指し、9校と提携した。講座の開設に向けて、指導教官を養成するカリキュラムを進めている。

現地従業員と同じ夢を追う

 日本でネット旅行代理店として急成長したエボラブルアジア(東京都港区)が、ベトナムに進出したのは12年だ。自社のシステム開発を担いながら、外部企業からも業務を請け負う『オフショア開発』で事業を拡大した。6年で売り上げは20億円に達し、社員数933人はベトナムのオフショア開発会社として最大手の部類に入る。

▲エボラブルアジア(東京都港区)吉村 英毅社長(写真右)とEvolable Asia(ベトナム)薛 悠司社長(同左)

 現地法人を経営するのは、学生時代にエボラブルアジアの前身Valcomを吉村英毅社長とともに創業した薛悠司氏だ。薛氏はその後リクルートに入社し、10年に父親が経営するプラント設備開発会社の現地法人を設立するために、単身でベトナムに渡った。『オフショア開発』事業は薛氏が吉村社長に話を持ちかけ、エボ社からの業務発注を条件に50%の出資を受け入れて始まった。

 『オフショア開発』に注目したのも、安価な人件費と豊富なIT人材を目の当たりにしたからだ。一方で、12年の時点ですでに後発であり、30社ほどの競合がいた。一気に業界大手に成長できたのは、優秀な人材の確保、特に離職率を低く抑えることに成功したからだ。入社初年度の離職率は意識していないという薛氏だが、残したい人材のつなぎ止めには最大限の力を注ぐ。1年以上勤務する社員の離職率は1割以下だ。

 薛氏は創業から3年間、自身の役員報酬をリクルート時代の半分にした。従業員と同じ電車に乗り、皆と同じものを食べた。「『君らの将来を考えている』と言いながら、高層マンションに住み、日本食だけを食べる上司を見ていたら、ベトナム人が愛社精神を持つはずがない」。離職率の高さを憂う経営者に対して、薛氏は従業員との目線の違いが彼らのやる気を削いでいることを指摘する。

 「(大事なのは)マジョリティとしてのベトナム人の力をどれだけ発揮させられるかだ」(薛氏)


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国際イベントニュース 編集長 東島淳一郎

国際イベントニュース編集長 東島淳一郎
2009年全国賃貸住宅新聞社入社。劇団主宰者から銀行勤務を経て30歳で記者に転身。7年間の記者生活を不動産市場で過ごす。2016年9月、本紙創刊とともに現職。

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