中小食品メーカー 海外へ

▲千代の亀酒造は今年、「ProWein」に出展した

中小食品メーカー 海外へ

海外に商機を見いだす、中小の食品生産会社の展示会出展が活発だ。限られた資金で成果を出すため、開催までに国内で情報収集に注力する。一方で、輸出先の国により趣向や文化により求められる商品が大きく異なる。

酒造メーカー千代の亀酒造(愛媛県喜多郡)は、年商9250万円のうち、9%を海外で売り上げる。海外での営業を始めたのは2012年。JETROの商談会や愛媛県主催の欧州販路開拓事業に参加した。

今年、欧州最大のワインの展示会「ProWein」に出展した。輸出実績がないドイツでの輸出先を探すためだ。海外営業担当の亀岡晶子さんは、事前にJETROでドイツの日本酒事情を聞き、手に入れたレポートから取引の見込みがありそうな会社にメールで問い合わせ、展示会での商談を取りつけた。

現地に出展する日本酒の選定には最後まで苦しんだ。欧州でもスイスは高額なお酒が好まれ、フランスでは一般的な銘柄が売れるなど、国ごとに特徴が異なるからだ。だが、リサーチをしても好まれる味の傾向までは知りようがなかった。

会場では、現地のソムリエたちから率直な感想を聞くことができ、ドイツで好まれる酒についてポイントをつかむことができた。事前アポを取った1社と会場で会ったもう1社と取引が始まった。

もう1つ亀岡さんを悩ませたのが、現地の宿泊料金の高さだ。会場のあるデュッセルドルフでは1泊の宿泊料金が4万円以上だった。会場に近いとさらに高いため、通える範囲で安価な宿を探すことに苦労した。

『アルコール粉末』一本で勝負

▲「英語は中学レベルで十分通じる」と話す佐藤食品工業の加藤諒さん

食品用の粉末製品を製造する佐藤食品工業(愛知県小牧市)は、国内商社を通じて中東などに輸出してきたが、3年前から自社で海外営業を始めた。商売の難しさを感じることもある。「Anuga」「Sial」は、個人店主の来場が大半だったため、食品工場向けの粉末材料が響かなかった。反響が大きかったのはアルコールの粉末だ。当面、海外展開では営業をアルコール粉末一本に絞る予定だ。今は、市場調査の段階で各国の需要を調べている段階だ。「Anuga」「Sial」のジャパンパビリオンや、米国サンフランシスコやタイの展示会に出展している。

「ドイツは真面目な人が多く、真摯(しんし)に耳を傾けてくれるので商談がしやすい。アメリカは親しみやすく興味を示すものの、商談は簡単に進まない印象。英語は中学レベルで十分通じる」(営業部・加藤諒さん)

『ゴマ』でつかんだ健康食トレンド

▲九鬼産業が3月にジャパンパビリオンで出展した「Natural Products Expo West2018」

米国アナハイムで開催された「Natural Products Expo West2018」に出展した、ゴマの総合メーカー九鬼産業(三重県四日市市)は、シンガポール、中国、オーストラリアなど、海外展示会に積極的に参加する。商社を通じて輸出する以外、自社で行う海外営業活動は展示会だけだ。

アメリカでは、オーガニックをはじめ、健康志向の人が多く高い評価を得た。反応が良かったため、来年も出展することを決めている。シンガポールは東南アジア各国から、中国系の来場者が集まった。「中国人は黒ゴマをドリンクにして飲む文化があるので、受け入れられやすい」(原田千大課長)


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海外の食品展示会 日本から出展殺到


国際イベントニュース 編集長 東島淳一郎国際イベントニュース編集長 東島淳一郎
2009年全国賃貸住宅新聞社入社。劇団主宰者から銀行勤務を経て30歳で記者に転身。7年間の記者生活を不動産市場で過ごす。2016年9月、本紙創刊とともに現職。

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