中小食品メーカー 積極的に海外へ

 
  • 2018/7/8
海外に商機を見いだす、中小の食品生産会社の展示会出展が活発だ。限られた資金で成果を出すため、開催までに国内で情報収集に注力する。一方で、輸出先の国により趣向や文化により求められる商品が大きく異なる。
▲千代の亀酒造(愛媛県喜多郡)は今年、ドイツの「ProWein」に出展した

千代の亀酒造(愛媛県喜多郡)

 酒造メーカーの千代の亀酒造(愛媛県喜多郡)は、年商9250万円のうち、9%を海外で売り上げる。海外での営業を始めたのは2012年。JETROの商談会や愛媛県主催の欧州販路開拓事業に参加した。

 今年、欧州最大のワインの展示会「ProWein」に出展した。輸出実績がないドイツでの輸出先を探すためだ。海外営業担当の亀岡晶子さんは、事前にJETROでドイツの日本酒事情を聞き、手に入れたレポートから取引の見込みがありそうな会社にメールで問い合わせ、展示会での商談を取りつけた。

 現地に出展する日本酒の選定には最後まで苦しんだ。欧州でもスイスは高額なお酒が好まれ、フランスでは一般的な銘柄が売れるなど、国ごとに特徴が異なるからだ。だが、リサーチをしても好まれる味の傾向までは知りようがなかった。

 会場では、現地のソムリエたちから率直な感想を聞くことができ、ドイツで好まれる酒についてポイントをつかむことができた。事前アポを取った1社と会場で会ったもう1社と取引が始まった。

 もう1つ亀岡さんを悩ませたのが、現地の宿泊料金の高さだ。会場のあるデュッセルドルフでは1泊の宿泊料金が4万円以上だった。会場に近いとさらに高いため、通える範囲で安価な宿を探すことに苦労した。

『アルコール粉末』一本で勝負

▲「英語は中学レベルで十分通じる」と話す佐藤食品工業の加藤諒さん

佐藤食品工業(愛知県小牧市)

 食品用の粉末製品を製造する佐藤食品工業(愛知県小牧市)は、国内商社を通じて中東などに輸出してきたが、3年前から自社で海外営業を始めた。商売の難しさを感じることもある。「Anuga(アヌーガ・ドイツ)」「Sial(シアル・フランス)」は、個人店主の来場が大半だったため、食品工場向けの粉末材料が響かなかった。反響が大きかったのはアルコールの粉末だ。当面、海外展開では営業をアルコール粉末一本に絞る予定だ。今は、市場調査の段階で各国の需要を調べている段階だ。「Anuga」「Sial」のジャパンパビリオンや、米国サンフランシスコやタイの展示会に出展している。

 「ドイツは真面目な人が多く、真摯(しんし)に耳を傾けてくれるので商談がしやすい。アメリカは親しみやすく興味を示すものの、商談は簡単に進まない印象。英語は中学レベルで十分通じる」(加藤諒さん)

『ゴマ』でつかんだ健康食トレンド

▲九鬼産業(三重県四日市市)は3月の「Natural Products Expo West 2018」ではジャパンパビリオンで出展した

九鬼産業(三重県四日市市)

 米国アナハイムで開催された「Natural Products Expo West 2018」に出展した、ゴマの総合メーカー九鬼産業(三重県四日市市)は、シンガポール、中国、オーストラリアなど、海外展示会に積極的に参加する。商社を通じて輸出する以外、自社で行う海外営業活動は展示会だけだ。

 アメリカでは、オーガニックをはじめ、健康志向の人が多く高い評価を得た。反応が良かったため、来年も出展することを決めている。シンガポールは東南アジア各国から、中国系の来場者が集まった。「中国人は黒ゴマをドリンクにして飲む文化があるので、受け入れられやすい」(原田千大さん)

英文・中文入りのパンフレットを持参

▲有機農業阪東食品(徳島県勝浦郡)は海外展示会で毎回新しい顧客をつかむ

有機農業阪東食品(徳島県勝浦郡)

 有機農業阪東食品(徳島県勝浦郡)の阪東高英代表が、海外の展示会に出展するときは1人か2人で現地に行く。飛行機代、宿代、その他諸経費で1人あたり15万〜60万円の費用がかかるため、大人数で行くのは難しい。そのため、なんでも1人でこなさなければならない。

 初めて出展したころは、言葉の壁に悩んだ。とにかく、コミュニケーションが取れない。今は、英文と中文入りのパンフレットや英文の規格書を作成して、商談に備えているという。

 物流面では、阪東代表がもっともこだわる『果汁の冷蔵での輸出』ができないことで苦労した。現在はパートナー企業を見つけたため、輸出できる国が増えた。

進出先は市場規模と手間のバランスで選ぶ

オーケー食品工業(福岡県朝倉市)

 油揚げを製造するオーケー食品工業(福岡県朝倉市)は、30カ国との取引がある。業務用が中心で、日本食レストラン、回転ずし店に納めている。年商90億円に対する海外売り上げ比率はまだ1割に満たないが、海外営業を本格化させたのは4年前だ。昨年「Anuga」に出展した時、油揚げを試食する来場者の反応が非常によく、商機があると自信を持てた。原料がほぼ植物性であり、中間層でも買える価格帯だということが評価につながった。

 海外営業室の本松洋さんが、輸出の難しさを感じることはない。国ごとにラべルを変えなければならないとしても、かかる手間と市場規模のバランスを考えるだけのようだ。

「小さい市場を狙うのに手間をかけていられないと思うのか、大きい市場があるから手間をかけようと思うのか。費用対効果の話だ」(本松さん)


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国際イベントニュース 編集長 東島淳一郎

国際イベントニュース編集長 東島淳一郎
2009年全国賃貸住宅新聞社入社。劇団主宰者から銀行勤務を経て30歳で記者に転身。7年間の記者生活を不動産市場で過ごす。2016年9月、本紙創刊とともに現職。

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