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- 医療インバウンドの専任エージェントも 【医療インバウンド】
日本エマージェンシーアシスタンス(東京都文京区)は、7年前から渡航支援事業を始めた。年間数百件の医療渡航者を国内の病院につないでいる。元々、国内外の医療機関に対して言語、輸送、医療費支払いなどの業務をサポートする事業を行っていることから、全国の病院とのつながりがある。現在、医療渡航者の紹介で提携する病院は150程度だ。国別で見ると中国が6割を占めるが、東南アジアからの渡航者が年々増加しているという。
中国のエージェントから紹介を受ける病院も多い。「(中国エージェントの)数自体は無数にある」と話すのは徳洲会グループの渡部昌樹氏だ。だが、現地エージェントから紹介を引き出すためには、タイをはじめとする世界の病院と競合していることを踏まえなければならない。「医療渡航先の選択肢において、日本の存在感は薄い。タイの病院などと競合したとき、負けてしまうことは多々ある」(渡部氏)。そのため徳洲会では中国のエージェントや医療渡航希望者に向けたセミナーを定期的に開催している。
最近、医療とは何の関係もない国内外の企業を通じて、人間ドックの予約が入ることもあるという。受診するのは外国人だが、支払いは企業だ。外国の取引先のVIPを迎えるにあたり、接待のメニューとして人間ドッグを使っているというわけだ。
富裕層が目立つ一方で、日本エマージェンシーアシスタンスの麻田万奈氏は「患者の全てが富裕層ではない」と話す。治療を目的とする渡航者は、ガンや、循環器系の疾患など状況が切迫している人が多く、日本に来たついでに観光や買い物を楽しもうとする雰囲気ではないという。一方で、人間ドックを受けに来る人には、やはり富裕層が多いようだ。
国内の病院側の状況を見てみると、医療渡航者を本格的に受け入れ体制を整える病院はほんのわずかだ。MEJが外国人患者の受け入れに積極的に取り組む病院「ジャパン・インターナショナル・ホスピタルズ(JIH)」として推奨するのは、全国でわずか病院(2017年8月時点、図)にとどまる。
聖路加や徳洲会などの受け入れ積極派は例外的な存在で、大多数の医療機関は医療渡航者の受け入れに消極的だ。経済産業省が全国9500の医療機関を対象に実施したアンケートでは、86.2%がインバウンドの「外国人患者を受け入た経験」がないと回答した。
経済産業省は、医療渡航者の受け入れ体制について「準備は5合目」だと話す。たしかに、外国人患者を積極的に受け入れるには多言語対応が必須。患者が来日する前から来院の目的や病状などを把握して、治療のメニューを考える必要もある。日本医師会は自由診療の拡大に直結する医療ツーリズムに反対の意向を示し、厚生労働省も慎重な姿勢だ。「あくまで地域医療がメインであり、それを踏まえ、医療渡航者拡大の可能性を探っている」(経済産業省・岸本堅太郎氏)
さらなる医療インバウンドの拡大には、海外における日本の医療機関の知名度向上と、国内医療機関の受け入れ体制づくりが必要だ。
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国際イベントニュース編集長 東島淳一郎
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2009年全国賃貸住宅新聞社入社。劇団主宰者から銀行勤務を経て30歳で記者に転身。7年間の記者生活を不動産市場で過ごす。2016年9月、本紙創刊とともに現職。