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【展示会場から】40万円のアルミ製カバン
- 2018/5/6
▲BLAU Design Complex(東京都世田谷区) 橋本荘一朗社長(48)
【展示会場から】40万円のアルミ製カバン
世界一美しいカバンを創る。そう決めた時、46歳だった。カバン作りはおろか、カバンに関わる仕事をしたこともない。手元にはアプリ開発で手にした数千万円の資金があった。橋本荘一朗は心に沸き起こるものづくりへの情熱にその全てを懸けた。同社が販売する定価40万円のアタッシェケースは、2年の製作期間と資財を投下して作った商品だ。
きっかけは、東京・丸の内で行き交うビジネスマンを眺めていたときだった。上品なスーツに身を固め、髪形も決まっているのに、皆、カバンだけが一様にくたびれていた。「どうして男物のカバンはかっこよいものがないんだろう」
デザインイメージはすぐに湧いた。浮かんだのは高級車のインテリアだ。「男は金属と革が好きだ」。橋本はアルミに革を貼り付けたアタッシェケースを描いた。そこまではあっという間に進んだが、実際にカバンを作ろうとすると、前に進めなくなった。
まず、カバンのために金属を加工してくれる工場がなかった。橋本は金属の継ぎ目が一切ないデザインにこだわった。継ぎ目をなくすには、インゴットと呼ばれる金属の塊をくり抜いて、カバンの骨組みを作らなければならない。削り出し加工と呼ばれるこの方法だと、1つの骨組みを作るのに、1つの金属の塊が必要だ。
試作品を作る工場はなんとか中国で見つけることができた。完成の連絡を受けて、意気揚々と受け取りにいくと3kg以上の重さがあった。極限までフレームを薄くした結果、アルミの塊の98%を削り出すことになった。
1月にはニューヨークの展示会に出展した。だが、バイヤーとのコネクションは一切ない。会期2カ月前に、4泊5日で渡米し、NY中の回れるだけの店を回った。「バイヤーを紹介してくれ」。片言の英語でひたすら呼びかけたら、何人かと話すことができた。削り出しでしか作れない独特の形は、一流バイヤーの目に留まった。持ち込みの商品が採用されることがめったにない世界だが、有名店での取り扱いが決まった。2年越しの橋本の戦いは、いよいよ佳境に入った。
国際イベントニュース編集長 東島淳一郎
2009年全国賃貸住宅新聞社入社。劇団主宰者から銀行勤務を経て30歳で記者に転身。7年間の記者生活を不動産市場で過ごす。2016年9月、本紙創刊とともに現職。
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