タイだからつかめた大手との人脈 工業用送風機・集じん機メーカー 昭和電機

タイだからつかめた大手との人脈
工業用送風機・集じん機メーカー 昭和電機

「波紋のように状況変わった」

昭和電機(大阪府大東市) 柏木健作社長(45)

工場の作業環境を改善する送風機や集じん機を製造する昭和電機(大阪府大東市)は前年から売り上げを15%伸ばし、80億円に手が届いた。業績を牽引したのは今期事業部を設置したばかりの国内メンテナンス事業だ。ベースとなった事業モデルは、7年前に進出したタイで確立したものだ。海外で確立したノウハウの逆輸入が大きな増収をもたらした。

「目の上のタンコブだった同業が、3年前に廃業してるんです」終始明るい社長の柏木健作の声が曇ったのは、「タイに出ていなければどうしていたか」と尋ねたときだ。国内市場は競合との長い戦いを経て、互いの顧客の顔もわかるほど停滞していた。海外の商機に気づかず同じことを繰り返していたら、立場が替わっていた可能性を一番感じているのが柏木だ。

2010年11月、柏木は、初めて参加した業界団体の視察ツアーから帰国してすぐ、自社商品の海外販売比率を調べた。事前の印象と違いタイの工場に最新鋭の機械が導入されていたことが気になったからだ。結果は、少なくとも自社商品の4割が海外で使われているというものだった。

顧客がほぼ国内企業だったために気がつかなかったが、納品した商品の電圧設定を調べると海外仕様の380ボルトにしたものがそれだけあったのだ。「1割あったらびっくりだ」と話していただけに、柏木は結果に衝撃を受けた。すぐさまタイに行き代理店を開拓すると、結果はすぐに出た。売り先はいくらでも見つかった。

▲タイの産業展示会「インターマック」では、半年分の仕事を受注する

次の転機は12年5月、インターマック(主催:UBMアジア)という産業見本市に出展して訪れた。タイで初めての展示会出展はこれまで経験したことがない案件をもたらしたが、それよりも大きな収穫となったのがメンテナンスや能力増強を求める顧客との出会いだ。

ブースに訪れる顧客の大半が、壊れた製品の修理を求めていた。当時のタイは11年7月から3カ月間続いた大洪水の復興需要に追われ、修理も洪水被害によるものが大半だった。

それまで、昭和電機は日本も含めメンテナンスに力を入れていなかったが、このチャンスを逃すわけにはいかなかった。大量の案件を代理店では対応できないため、すぐに現地法人の設立に取り掛かると、7月に登記を終え、11月には営業を開始した。さまざまな工場から呼ばれた。きちんとした部品で修理を引き受けられるところが他にないからだ。

当然、他社の製品の修理も頼まれたが、全て受けた。その結果、タイの工場が抱える悩みをつかみ「ウィンドレーサー」をはじめとする新商品が生まれた。また、競合製品の強みと弱みを知る機会となった。展示会では回を追うごとに出展スペースを拡大した。今でも1回の出展で半年以上の案件を獲得するほど来場者がやってくる。

また、会場のメイン通路で大きなブースを構えると、タイの産業界で認知が一気に高まった。やがて日本では接点を持つことが難しい、大企業のタイ工場トップとも仕事をするようになった。今では彼らが新しい機械を導入するときには、機械メーカーに「昭和電機の部品を使ってくれ」と指示が出る。

さらに彼らが日本に戻ると、絶対に動かなかったはずの日本の市場で、新規の仕事が入るようになった。「タイでの商売が波紋のように状況を変えた」 タイでの売り上げは、日本経由も含め5億円程度だが、タイをきっかけに日本での商売も拡大したことが今の昭和電機の好業績を支えている。

17年4月、満を持して国内で始めたメンテナンス事業は、働き方改革の一環で工場の労働環境に対する法改正が行われたことを受けたものだ。柏木の読みは当たり、1年目で5億円を売り上げた。

2000台売れた業務用扇風機

2012年に発売し、これまでに2000台以上売った業務用扇風機「ウィンドレーサー」はタイの需要に応えて作ったヒット商品だ。一般的な扇風機の3倍の能力で電気使用量は3分の1に抑えた。トヨタ系部品メーカーの工場では3000台の扇風機が稼働していたが、相当数が毎年壊れていた。費用に加え廃棄物の処理に手を焼いていた工場ですぐに導入が決まった。


国際イベントニュース 編集長 東島淳一郎国際イベントニュース編集長 東島淳一郎

2009年全国賃貸住宅新聞社入社。劇団主宰者から銀行勤務を経て30歳で記者に転身。7年間の記者生活を不動産市場で過ごす。2016年9月、本紙創刊とともに現職。

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