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語る手記(7)
- 2017/10/20
酒を飲んで高座に上がることも珍しくなかったという。酔いが回って噺が支離滅裂になると、客には大うけした。時には途中で居眠りをはじめ、前座が起こしにかかると「寝かしといてやんな!」とヤジが飛ぶ。昭和の落語家、古今亭志ん生である。
数ある志ん生の噺の中でも、人情話には思わず涙がこぼれる。印象的なのは「子別れ」だ。大酒飲みで遊び人の熊五郎は、ある日嫁と子供に三下り半を突き付けられる。すっかり改心して真面目になると、町でばったり子どもに出会ったことがきっかけで、元の鞘に収まる。「おとっつぁん、お願いだから昔のように暮らそうよ」。親の縁をつなぎとめる子どもの姿が、涙を誘う。
人情があるのは落語の世界だけなのだろうか。21日、児童虐待の疑いがあるとして児童相談所に通告した18歳未満の子どもの数が、1~6月で3万262人にのぼったと警察庁が発表した。
家の柱と柱をつなぎとめるために打ち込む釘に倣って、「子はかすがい」と言ったものだ。だが、歪んだ柱に傷つけられたかすがいは、どう癒せばいいのか。
国際イベントニュース 編集部 長谷川遼平
2012年入社。賃貸住宅に関する経営情報紙『週刊全国賃貸住宅新聞』編集部主任。起業・独立の専門誌『ビジネスチャンス』にて新市場・ベンチャー企業を担当。民泊やIoTなど、新産業を専門に取材中。