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- 第5回 主催会社の採算 ~ドイツの展示会は何がすごい?~
▲メッセ・ミュンヘン副CEO Dr.ラインハルト ファイファー
メッセ・ミュンヘン 独立採算へ
世界最大の建材業界の展示会「bauma」では、屋外会場に2階建ての建物を建てた出展企業がいた。工事期間は6カ月。出展企業はその間、会場を借り続けた。
海外の展示会は、開催前後の準備期間が長い。6カ月は珍しくても、1~2週間用意されていることも珍しくない。日本の場合、施工期間は1日が大半で、撤去に至っては、開催最終日の会期終了後、たった数時間だけだ。
ドイツの展示会運営に余裕があるのは、会場自体が主催者だからだ。準備期間を長く設けても、主催会社は会場使用料を支払う必要がない。そもそも会場、兼、主催会社の株主は地元の自治体がほとんどを占める。地域経済の振興に寄与するために存在する展示会場の役割が、経営体制においても明確だ。
言い方を変えれば、ドイツの展示会場は、一般的な民間企業に比べると、緩い経営が許されてきた。だが、モラトリアム期間は、終わろうとしている。「bauma」を開催するメッセ・ミュンヘンは、昨期から完全な独立採算に移行された。売り上げは年商550億円に上り、世界的な民間展示会主催会社と比べてもそん色ないが、今後は700人を超える社員を自力で雇用していかなければならない。
現状、ドイツの各展示場の稼働率は、日本ほど高くない。東京ビッグサイトや幕張メッセの稼働率は7割を超えている。7割といっても、年間100日以上がきれいに空いているわけではない。イベント開催期間に、一部のホールが空いているという状況だ。そのため、海外から大型展示会を誘致することが難しい。
これは、日本の展示会業界の課題だが、一方で、巨大施設の経営は簡単ではない。今後、メッセ・ミュンヘンの展示会運営を注視する必要がある。
国際イベントニュース編集長 東島淳一郎
2009年全国賃貸住宅新聞社入社。劇団主宰者から銀行勤務を経て30歳で記者に転身。7年間の記者生活を不動産市場で過ごす。2016年9月、本紙創刊とともに現職。