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▲大阪IR推進会議の座長を務める溝畑宏氏は、2010年の観光庁長官時代から日本のIR誘致に賛成の立場だ
大阪府と大阪市の呼びかけで3月末に発足した大阪IR推進会議は、年末に国会提出が予定されるIR実施法案可決後、大阪への誘致・着工を速やかに行うことを目指して、準備を整える。メンバーにはIRに詳しい大学教授や民間経済団体などから8人が選出され、座長には(公財)大阪観光局の溝畑宏理事長が就任した。
2010年の観光庁長官時代から日本にIRが必要と主張してきた溝畑座長は、「府民の理解を得るために、あらゆる立場・考えの人と議論したい」と話した。溝畑座長にIRに対する基本的な考えを聞いた。
―以前からIR推進を訴えていたと聞く。なぜ、IRが必要だと思うのか。
7年前、観光庁長官時代にシンガポールのIRを視察した時、リーシェンロン首相は「何もしないで、シンガポールが国際都市競争から取り残されるわけにはいかなかった」と言った。観光資源に乏しいシンガポールには、富裕層を引きつけ続けるために、必要だったということだ。日本にもIRが必要だと考えるようになったのはその時からだ。国際競争力をつけるためには、富裕層を集め生産性を高めなければならない。IRはそれを可能にする力がある。
―すでに世界中にIRがあるが、後発で参入する日本に勝算はあるのか。
絶対に勝てる。観光資源の質と数が、他国に比べて勝っているからだ。関西を見渡せば、歴史遺産も、自然も豊富にある。そして、日本は安心、安全、快適な国だ。会議に訪れるVIPだけでなく、その家族を満足させるための観光資源は、あらゆる都市と比べて質量ともに圧倒的だ。
―国内外の運営会社が大阪を訪れているが、候補の選定は進めているのか。
運営事業者については一切何も決めていない。大阪で世界最高のサービスを提供する戦略を提示する会社を選ぶ。
―府民の間で、反対の声もたくさん上がっている。
新しい挑戦を不安に思う人がいるのは当然だ。府民向けの説明会では、あらゆる人と議論し、私自身がIRが必要だと思うに至った理由を説明する。そこで問題点が見つかれば、解決策を探せばいい。幸いにも我々にはシンガポールをはじめ学ぶべき先行事例がたくさんある。
―理解を得るために何を行うのか。
まだ、IRをカジノと同一視している人が多い。カジノは全体のごく一部で会議場、商業施設、芸能施設、宿泊施設などが一体となって開発されるのがIRだ。大規模な一大観光施設なのだ。その施設の一部にカジノが含まれる。開発費用は数千億から1兆円を超える可能性もある。これだけの開発を行うことができるのは、カジノが利益を保証しているからだ。カジノがなければ、民間企業による開発は不可能だ。
―IRが富裕層の集客装置になるということか。
集客ではない。お金を稼ぐということだ。よく勘違いされるが、観光は集客が目的ではない。せっかく呼んでもお金を使ってもらわなければ意味がない。IRだけでなく、大阪全体として、観光客がお金を使う機会に結びつけなければならない。
国際イベントニュース編集長 東島淳一郎
2009年全国賃貸住宅新聞社入社。劇団主宰者から銀行勤務を経て30歳で記者に転身。7年間の記者生活を不動産市場で過ごす。2016年9月、本紙創刊とともに現職。