GDPは世界で12番目 ロシア ~近くて、遠い国~(第4回)

15、16年はマイナス成長

 今のロシア経済は、大国とは言い難い。名目GDPは約1兆3247億ドルで世界第12位(2015年)、一人あたりに換算すると9055ドルで1万ドルを割り、世界69位まで下がる。2015年は旧ソ連のカザフスタンを下回る結果となった。2000年以降、原油価格の高騰を背景に急成長したロシア経済は、08~09年の世界的な金融危機で大きく低迷した後、一度回復の兆しを示した。だが15年のGDP成長率は対前年比マイナス3・7%、同16年マイナス0・2%とここに来てマイナス成長が続く。

 最大の不安要因は、言うまでもなく資源依存型の経済にある。石油生産ではサウジアラビアと生産量で世界トップの座を争っている(5億3400万t/年、2015年)。同様にガスの生産量では米国とトップを争い(5540億㎥/年、2015年)、石炭の埋蔵量も非常に多く(3億7200万t、2015年)、金やダイヤモンドの生産量も世界第1位を誇る。鉄鉱石、レアメタル・レアアースなども豊富に眠っており、文字通り、資源大国だ。

 石油もガスも新たな鉱床の開発が進められているが、新しい産地として期待されるのは大陸棚や北極海など採掘の困難な場所が多く、高度な技術が求められる。だが、経済制裁の影響で欧米からの技術導入が進まず、数年後の生産減が懸念される。ロシアの輸出総額に占める燃料エネルギー資源の割合は約7割に達する。一方で、機械や設備など、付加価値の高い製品の生産については産業構造が脆弱(ぜいじゃく)だ。資源依存型の構造は常に問題視されており、産業の多角化、製造業の近代化、イノベーションといった改革が国の最重要課題として掲げられている。

 これらの課題克服には技術導入が欠かせない。国内での研究開発はもちろんだが、外国からの投資誘致や技術導入が必須であり、誘致政策が推奨されてきた。例えば、自動車産業では、現地生産を行う外資系企業に対して税制の特典を与えた結果、日本のトヨタや日産をはじめとする外国の自動車メーカーのロシア進出が2000年代以降に相次いだ。これを成功例とし、最近ではやはり輸入品の割合が非常に大きい医薬品や医療機器などの分野でも現地生産を積極的に誘致している。

▲(一社)ロシアNIS貿易会(東京都中央区)中馬瑞貴研究員
上智大学外国語学部ロシア語学科卒、慶応義塾大学法学研究科政治学博士課程。2008年より同社。


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