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ロシアに挑む中小企業 日用品に商機見いだす
- 2017/1/11
- ロシア
政府はロシアに提出した8項目の経済協力プランに、中小企業の交流促進を盛り込んでいる。両国政府の接近に期待が高まるなか、すでにロシアで事業に取り掛かる経営者たちは、衣料品やシャンプー、リンス、乳児用紙おむつのような日用品の販売に商機を見いだす。日本製のブランド力はロシア市民の間で今も健在だという。
■寒冷地仕様の手袋
軍手や業務用手袋を卸販売する青井商店(北海道旭川市)がロシアでビジネスを始めたのは2012年だ。青井貴史専務は、主要商材である寒冷地仕様の手袋が売れると見定めた。北海道庁が企画したハバロフスクでの商談会に参加してみると、予想以上の反響を得た。商品を手に取ったロシア人バイヤーたちが、品質の良さに食いついたのだ。
だが、すぐ商売に結び付いたわけではない。市場に流通する中国製に比べて価格は5倍以上高かった。
状況が好転したのは、商談会から1年以上が過ぎた頃のこと。信頼のおける現地のビジネスパートナーと知り合ってからだ。彼の紹介でユジノサハリンスクとウラジオストクに定期の取引先ができた。
展示会に出展することも多いが、当てもなくいきなり出ることはない。その地域で販売代理店となるパートナーを決めてから出展する。現在、2カ月に一度のペースでロシアに渡るのは、ビジネスパートナーから紹介された代理店候補企業と会うためだ。
■女心をつかみに行く
20年前からロシアで商売を続けるのは、エムズプランニング(名古屋市)だ。ボート用のエンジンとシャンプーやリンスなどの衛生日用品を卸している。当初は、自動車や建機などの耐久財を扱っていたが、数年前から日用品の取引を増やしている。
日本製の中古車と中国製の新車が同じ値段で売られるため、中国製の品質が上がるにつれて、競争が厳しくなった。
一方で、肌に直接触れる商品は品質を実感させやすく、女性を中心に日本製の人気が高いのだ。
■道銀発のベンチャー
昨年、北海道銀行の社内ベンチャーとして生まれた北海道総合商事(札幌市)は、法人向けのロシア貿易で初年度3億円を売り上げた。農業用の温室をつくるための建築資材輸出が3割強を占め、その他、機械から消耗品まであらゆる商材を売った。また、魚介類の輸入による売り上げも3割に達した。
「優秀なロシア人スタッフを雇えたことが強み」と話す天間幸生社長は、銀行時代から10年以上ロシアでビジネスをしてきた。その人脈で迎え入れた7人のロシア人は、全員日本語を話す。
制裁下でも個人消費は堅調
今のロシア経済が厳しい状況にあることは、関係者の多くが口をそろえる。経済制裁の前から始まりつつあった石油価格の下落は、エネルギー業界を弱らせた。制裁で進んだユーロ高ルーブル安は、ユーロ建ての融資を受けるロシア企業の経営を追い込んだ。欧州企業との取引が多い企業はユーロを持たざるを得ないのだ。
だが、すべての産業が落ち込んだわけではない。「食品やITなどロシア内で成り立つ産業は成長軌道にあるものも多い」(ROTOBO・中馬瑞貴研究員)。ルーブルだけで成り立つ市民経済は比較的堅調ともいわれる。制裁による物資の不足を追い風にできれば勝機はあるということだ。
国際イベントニュース編集長 東島淳一郎
2009年全国賃貸住宅新聞社入社。劇団主宰者から銀行勤務を経て30歳で記者に転身。7年間の記者生活を不動産市場で過ごす。2016年9月、本紙創刊とともに現職。