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ナイトタイムエコノミー 文化・娯楽施設が狙う5兆円の「夜遊び市場」
- 2018/2/10
- ナイトタイムエコノミー
ナイトタイムエコノミー 文化・娯楽施設が狙う5兆円の「夜遊び市場」
観光客を夜間も美術館や博物館、娯楽施設などに引き込み、経済効果を高めようとする「ナイトタイムエコノミー」を実現させようとする動きが高まっている。
訪日観光客から「夜間に立ち寄れる施設が少ない」との指摘が多数あったことからはじまった活動で、自民党が専門の議連を立ち上げたほか、観光庁なども推進に名乗りをあげる。
昨年、風営法が改正されたことから施設の営業時間に関しては実施に向けた土壌は整いつつあるが、移動手段の確保や地方への波及など課題も多い。
施設の夜間営業を推進 鉄道・バス24時間対応
19日の金曜日19時、東京・上野にある国立西洋美術館は多数の来館者でごった返した。同館は昨年に金・土曜の閉館時間を18時から20時に延長したばかり。
その日は昨年10月からスタートした葛飾北斎をモチーフとした特別展「北斎とジャポニスム」を開催しており、30~60代を中心とする日本人来館者が18時以降になっても多数訪れた。
「仕事終わりでもゆっくり訪れられるのはありがたい。また別の展示がはじまったら来ると思う」。
そう語るのは、大阪市から出張で東京を訪れた40代のサラリーマンだ。月に一度の頻度で東京を訪れるが、夕方仕事を終えるとその日のうちに大阪へと戻る。
「半年前にはスカイツリーにも行った。出張はだいたい一人なので居酒屋に行こうとは思わないが、こうした観光施設が夜間も営業していればありがたい」という。
国立西洋美術館によると延長した時間に来館するのはほとんど日本人だが、中には外国人の姿もあるという。
京都市にある禅寺「閑臥庵(かんがあん)」でも数年前から夜間にライトアップを実施。拝観時間も22時までに延長すると、拝観者が増加した。
こうした夜間需要をさらに広げようとするのが、自民党の時間市場創出(ナイトタイムエコノミー)推進議連だ。
娯楽・文化施設の夜間営業を拡充するとともに、鉄道などの運行時間も延長させ、夜間の消費を拡大させようとする動きで、年間経済効果は5兆円に上るとされている。
ベンチマークとなるのはロンドンだ。2016年の市長選で初当選したサディク・カーン氏がナイトタイムエコノミーに注力することを表明。主要地下鉄の一部で24時間営業に踏み切り、1年で約263億円の経済効果を生むことに成功した。
自民党時間市場創出推進議連の事務局長を務める国土交通副大臣の秋元司氏は「訪日外国人はよく『日本の夜はつまらない』と言う。たとえば、ニューヨークであればブロードウェイがあり、スポーツショーなどもたくさんやっている。もちろん、日本にも劇団四季などのショーはたくさんあるが、どれも人気なので訪日客がチケットを入手するのは難しい。風営法が改正されたことでナイトクラブやエンターテインメントなども午前5時まで営業できるようになり、夜間市場を活性できる土壌は整いつつある」と語る。
課題はインフラの整備だ。観光メディア『タイムアウト』を発行するタイムアウト東京(東京都渋谷区)の伏谷博之社長は「日本を訪れる観光客を対象にアンケートしたところ、交通機関に対する不満をあげる人が4割近くいる。タクシーは料金が高くて利用しづらく、終電がなくなるとホテルに帰ることができない。さらに、朝まで営業している店舗や施設も少ないので、居場所なく街を散策するという人もいる」と分析する。
また、地方への波及も鈍そうだ。訪日観光客に沸く箱根観光協会の古谷和久氏は「箱根は夜に営業している店がないので、訪日客のほとんどは宿で過ごす。箱根を訪れる人の多くは芦ノ湖など自然の景色を楽しみに来るので、夜間市場をどう生かすか、ということにはまだ考えが及んでいないのが実情だ。ただ、箱根にも美術館や博物館がたくさんあるので、こうした施設を夜間市場に生かせればいいが」と語る。
秋元氏「コト消費の促進を」
―先日、観光庁による訪日外国人客の市場動向の調査が発表されたが、訪日客数、消費額はともに増加している。
これまではビザの緩和などで訪日客数を伸ばしてきたが、今後さらに増やしていくためには、日本の魅力を伸ばすための施策が必要となってくる。
―そこで特に重要となるのが夜間市場だ。夜間市場の活性化には、いわゆる「コト消費」の促進が必要となるが、訪日外国人の消費動向をみると日本での消費額のうちコト消費にかけているのはわずか1%しかない。
海外を見ると、アメリカでは約10%、フランスやドイツでは7%程度がコト消費に費やされている。この差を埋めていくことが日本の観光産業の活性化につながるのであり、そのためには夜間市場の強化が不可欠だ。
―夜間市場を活性化させるためには、観光客の移動手段を確保するという意味だけでなく、夜間営業する施設で働くスタッフの就労環境を整えるためにも、鉄道やバスなどの運行を24時間対応させることも必要となる。
国際イベントニュース 編集部 長谷川遼平
2012年入社。賃貸住宅に関する経営情報紙『週刊全国賃貸住宅新聞』編集部主任。起業・独立の専門誌『ビジネスチャンス』にて新市場・ベンチャー企業を担当。民泊やIoTなど、新産業を専門に取材中。
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