- Home
- イトーヨーカドー春日部店 「クレヨンしんちゃん」のファン集う
「クレヨンしんちゃん」のファン集う イトーヨーカドー春日部店
韓国から来日した3人「これ見るために来た」
埼玉・春日部市のイトーヨーカドーで、春日部を舞台にしたアニメ「クレヨンしんちゃん」の放映開始周年を記念したイベントが、12月15日から始まった。ヨーカドーだけでなく、版元の双葉社、埼玉県、春日部市、東武鉄道が主導する春日部市のPRプロジェクトの一環で行われるものだ。店舗屋上の大型看板や、関連商品を購入したレシートの店名を、作品に出てくる「サトーココノカドー」に変えるなど、ファン泣かせの企画が盛り込まれ、初日の会場には、イベントのために来日した韓国人観光客グループの姿も見られた。
店看板作品と同じサトーココノカドー
東武線春日部駅前のロータリーから路地を入り、数十メートル歩くと、日常と変わらない商店街の風景に違和感を感じた。よく見ると、見慣れたはずのヨーカドーのトレードマークが白いハトからコウモリに変わっていた。
ロゴの下の店名も「サトーココノカドー」となっていた。周りに目を向けると看板に向けてスマートフォンを構える人がたくさんいた。
ヨーカドーという老舗が会社のロゴをイベントのネタに提供した思い切りの良さに、期待が一気に膨らんだ。
店舗では、通常商品在庫を置いているバックヤードスペースに特別展示コーナーが設けられた。入場料は1000円。15日(金)の15時には、若い主婦仲間のグループや男性学生グループ、一人で来たファンなど、30人ほどがいた。
この日の朝、友人2人と韓国から来日し、留学時代の友人とともに会場にやって来たソン・チュンマンさんはアニメの公式フェイスブックをフォローしており、このイベントのことを知った。「しんちゃんの大ファンで、日本語を覚えるのにもとても役立った」(ソンさん)。この後、留学していた大学のある茨城に行き、5日間日本に滞在するが、目的はあくまでこのイベントだということだった。
アマゾンに勝つコト消費の仕掛け
イベントを企画したイトーヨーカ堂の兼山淳埼玉ゾーンマネージャーは、インバウンドの集客を当初から狙っていたという。
中国のテレビ局も取材に来ていた。クレヨンしんちゃんは、中国で3番目に人気のある日本のアニメだそうだ。だが、「このために来日した」というソンさんの言葉は兼山氏にとっても予想外だったようだ。
ヨーカドーの目的について、兼山氏に聞くと「まちのPRとコト消費」と答えた。
店内の施策はヨーカドーの予算で行っているが、周辺商店街でもアニメをあしらったのぼりが出ていたり、東武春日部駅で駅名を掲げた看板がしんちゃん仕様に変わっていたりと、イベントは街のPRとして自治体や周辺企業と共同で取り組むものだ。春日部そのもの認知度を高めて地域外から人を呼び込むのが狙いだ。来春公開されるクレヨンしんちゃんの映画は「爆盛!カンフーボーイズ拉麺大乱」と題した、春日部にある架空の中華街「アイヤータウン」が舞台だ。
春日部市では公開に合わせて、中華街を作る計画も上がっている。
実現すれば、中国からの集客に大きな期待ができる。
一方、コト消費は、兼山氏にとって、ライバルとの厳しい戦いに勝つための戦略だ。店内にある生活用品の大半はアマゾンでも安く買える。春日部市内にはイオンモールや、三井不動産系の「ららシティ」もある。
店舗面積はどちらもヨーカ堂春日部店よりも大きい。他店舗で手に入らない商品を用意しなければ、顧客の獲得は難しい。
イベント期間中、店内では春日部店でしか買えない商品をそろえた。春日部に工場がある桃屋からは、パッケージにしんちゃんをあしらった主力商品「ごはんですよ」を仕入れた。
自社では、サトーココノカドーのタグを裏地に入れたスーツを、期間中だけ販売した。
「作品関係者の有名人がこのスーツを着てSNSに上げてくれたら、『次のイベントには春日部のヨーカドーに行かなきゃ』と考える人が一気に増えるかもしれない」(兼山氏)
これらの商品を買ったときに渡されるレシートや、商品袋には「サトーココノカドー」のロゴが入っている。販売しているものではないだけに、かえって商品以上のインパクトがあった。全国チェーンの小売店でも、各店舗は地元の経済に売り上げを依存している。ヨーカ堂春日部店は自治体や地元企業に劣らない地域の盛り上げに対する本気度を示した。
国際イベントニュース編集長 東島淳一郎
2009年全国賃貸住宅新聞社入社。劇団主宰者から銀行勤務を経て30歳で記者に転身。7年間の記者生活を不動産市場で過ごす。2016年9月、本紙創刊とともに現職。