MGMリゾーツ日本法人 CEOエド・バワーズCEO  「カジノの稼ぎがMICEへの投資支える」

▲▲ラスベガスに本社を置くMGMリゾーツの日本法人CEOのエド・バワーズ氏

カジノの稼ぎがMICEへの投資支える

MGMリゾートインターナショナルは、米国ラスベガスで45年前にカジノホテルを開設し、現在は米国と中国マカオで27のホテル・リゾート施設を運営する。売り上げは94億ドルで世界有数のIRオペレーターだ。
日本のIR運営にも意欲を表し、3年前に日本法人を開設した。
日本法人代表のエド・バワーズCEOに話を聞いた。

―そもそも、IRとは、どういうものか。

カジノ、ホテル、MICE施設、エンタテイメント施設、場合によっては住宅、商業施設が一体となった施設だ。カジノばかりが注目されるが、我々が運営するような大規模IRは、施設全体におけるカジノ部分の面積が5%程度で、全体の95%はそれ以外のもので構成されている。

ただし、利益の中心はカジノだ。マカオでは収益の95%をカジノが生み出す。シンガポールは75%、ラスベガスは35%だ。

政府の管理下でIRが運営されるマカオとシンガポールは、それぞれ6施設と2施設に数が制限され、政府の管理下で運営されている。
そのためカジノの収益性も高い。

ラスベガスは自由競争なので、ストリップ地区だけで30の施設が並ぶ。そのためカジノ以外の部分における競争が激しい。
日本で議論されているIRの制度は政府管理型なので、シンガポールと同じような収益構造になるだろう。

 

―カジノとIRの決定的な違いは他の施設が隣接しているか、いないかということなのか。

カジノは投資に対して大きな利益を生み出す。カジノがあるからそれ以外の施設に対しても大規模な投資が可能になる。例えば、MICE施設は世界中にあるが、概ね公的な施設だ。投資リターンが低いため、民間で作るのが難しい。
だが、IR場合、カジノの存在がMICEをはじめとする他施設への大規模な投資を可能にする。そのため、IRでは民間らしいMICE施設をつくることができる。
日本で政府や地方自治体と話していても、MICEと、国内の他の地域の魅力を伝える観光コンテンツへの投資に力を注ぐことが求められていると理解している。
IRは公共政策として行われるものなので、民間事業者が作るのは、あくまで公共政策が求める成果を実現するものだ。

 

―日本ではどのようなIRを作ろうと考えているか。

繰り返すが、どのようなIRになるのかを決める中心にあるのは政府の公共政策だ。我々はそれを実現するプランを提案する。
政府の方針に沿わないものであれば、認可を得る事はないだろう。そのため、我々は3年前に日本に拠点を設置し、多くの政府や自治体、企業関係者と会ってきた。

どんなIRを作りたいのかを知るためだ。どこが運営するにしても、ライセンスを得る企業は日本ならではのIRを作ることになる。 また、政府は、国際的な競争力があるものを求めている。最大のライバルはシンガポールとなるだろう。

シンガポールでサンズ社が運営する「マリーナベイサンズ」は50億~60億ドルかかったと言われている。これと同じ規模のものを今の日本で作ろうとすると100億ドル程度かかると試算される。当社も含め、各社のトップが100億ドル規模の投資だと発言するのはそのような理由からだ。

リーマン・ショック後の低迷 地域住民集客できなかった

―リーマン・ショック以降、IR運営各社の経営は非常に厳しく、MGMも赤字決算が続いた。

IRは利益が出るという前提で話が進むことが多いが、そうとも言えないのではないか。
 元々、IRは景気後退に影響されないと言われていた。景気後退期には、海外旅行に出かけていた人が近場のIRに行くと考えられてきたからだ。だが、実態は違った。
原因の一つは、リーマン・ショックに端を発する景気後退があまりにも大きかったこと。
そしてもう一つは、リーマン・ショック前の2007~2008年頃、ラスベガスのホテル宿泊料金は非常に高くなっていた。
ラスベガスのラグジュアリー化が進み、周辺住民の手軽な旅行先ではなくなっていた。そのため、宿泊料金を下げたのが利益を下げた理由だ。
 また、マカオでは中国政府が打ち出した汚職排除の政策により、中国VIPの客足が遠のいた。
そこで、顧客ターゲットをVIPからハイクラスのマス層に切り替えた。これらが身を結び、業績は回復している。

―日本のIRでも日本人は重要な顧客対象として考えているか。

 政府は、IRを外国人観光客を呼ぶことを目指して作ろうとしている。
そういう意味ではあくまで外国人旅行者の獲得が第1の目的だが、地域の日本人もIRの基礎を支える重要な顧客対象だ。
韓国の大規模IRが成功していないのは外国人客専用だからだ。そのような状況を考えるとカジノへの規制はバランスが重要だ。
規制をかけすぎると客足が遠のき、観光目標の達成が遠のいてしまう。

―日本のIRは世界的な競争力を持ち、競争に勝っていけるのか。

 間違いなく魅力的なIRを作ることができる。
日本の大都市は世界的に見ても人口密度が高い。
経済も強く、収入も高い。海外から人を呼ぶための空港、また国内インフラも充実している。私の印象だが、日本政府はIRのオペレーターに観光目標に対する責任を課すだろう。それでもIRは政府の観光目標の達成に十分力を発揮する。
海外かRのオペレーターに観光目標に対する責任を課すだろう。それでもIRは政府の観光目標の達成に十分力を発揮する。

 

 

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