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語る手記(12)
- 2017/12/25
9.11翌月の2011年10月、ジョージ・W・ブッシュ大統領がニューヨークのヤンキースタジアムで始球式のマウンドに立った。
その直前、遊撃手のデレク・ジーターはこう尋ねる。「正規のプレートから投げますか」。防弾チョッキが重いから、と捕手に近い場所から投げようとする大統領に、ジーターは「観客にブーイングされますよ」と告げる。本番では正規プレートに立った。マウンドには一国の大統領をも従わせる伝統がある。
▼土俵には、もはやそれはなくなったらしい。日馬富士関の暴行事件に端を発した角界の不審は、すっかり白鵬対貴乃花親方に行き着いた。白鵬が角界トップに立つ大統領ならば、貴乃花親方は相撲の伝統を映す偶像か。ついにはモンゴル人力士の星の回し合いまで疑われ、国技としての誇りを懸けた争いへと差し替えられた。
▼取組ではなく場外乱闘のおかげで日本中の注目を集めたのだから、皮肉だろう。それほどまでに国技としての誇りが失われている、ということかもしれない。いっそ年明けの一月場所は、日本人力士対モンゴル人力士のスペシャルマッチ巡業にでも変えてみてはどうか。沈黙を守ってお茶を濁すよりましだろう。
国際イベントニュース 編集部 長谷川遼平
2012年入社。賃貸住宅に関する経営情報紙『週刊全国賃貸住宅新聞』編集部主任。起業・独立の専門誌『ビジネスチャンス』にて新市場・ベンチャー企業を担当。民泊やIoTなど、新産業を専門に取材中。