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語る手記(11)
- 2017/12/10
落語家・柳家小三治の「出来心」はこう始まる。「落語に出てくる泥棒といえばしっかりした人物はいないもので、ドジでマヌケな者ばかり。それでも、親方がちょっと注意をすると『これからは真面目に泥棒家業に精を出します』と誠意を見せると許されちまうんだから、気楽なもんです」。悪事を働いても出来心なら仕方ないという小噺だが、問題の大元はいつだって小さな出来心なのかもしれない。
大相撲九州場所は23日、白鵬が御嶽海に勝利した。いつもなら取組に注目が集まるが、今は何が起ころうとも日馬富士関の暴行事件以外に目は向かないだろう。殴った凶器は空き瓶か、リモコンか。証言が二転三転する上に、診断書や協会への協力を巡り貴乃花親方も賛否がわかれる。暴行事件を起こしてしまい、謝罪する。それだけで済んだはずの問題が、いつの間にやら相撲業界全体を不信に包み込む大問題に発展してしまった。
目撃者が多数いる事件なのに、こうもこじれる理由は何か。誰がうそをついているのか。つじつまの合わない問題が残る限り、元通り大相撲を楽しめる日は来ない。悪事を出来心のせいにできるのは、落語の世界くらいなものだから。
国際イベントニュース 編集部 長谷川遼平
2012年入社。賃貸住宅に関する経営情報紙『週刊全国賃貸住宅新聞』編集部主任。起業・独立の専門誌『ビジネスチャンス』にて新市場・ベンチャー企業を担当。民泊やIoTなど、新産業を専門に取材中。