カザフスタンと「一帯一路」④

 
  • 2017/8/10

語り手
(一社)ロシアNIS貿易会(東京都中央区)
中馬瑞貴研究員

上智大学外国語学部ロシア語学科卒、慶応義塾大学法学研究科政治学博士課程。2008年より同社。


第4回 右手に中国 左手にロシア

 2015年1月に発足したユーラシア経済同盟(EEC)の前身となったロシア、ベラルーシ、カザフスタンの3カ国による関税同盟の発足によって、域内での関税が統一され貿易の関税障壁が撤廃された。続くEECにはこの3国にアルメニアとキルギスが加わった。「ロシアが主導する」EECと考えられがちだが、20年以上前から地域統合に積極的なナザルバエフ大統領率いるカザフスタンにとっても、非常に重要な地域経済協力の枠組みだということは忘れてはならない。

 政治、経済的影響力の拡大で注目されるロシアと中国のはざまにあるカザフスタンや中央アジア諸国については、二大大国がまるで取り合いや影響力の及ぼし合いをしているかのように受け取られやすい。だが、カザフスタンは独自の外交路線で多国間関係を重視してユーラシア地域を俯瞰(ふかん)している。ナザルバエフ大統領は親ロか、親中か、はたまた親欧米かという軸で判断できるほど単純な外交を行ってはないのだ。

 このようなカザフスタンのバランス外交の中で、日本はどのような位置づけにあるのか。

バランス重視の外交巧者

 5月14、15日、北京で行われた国際フォーラムに参加した二階自民党幹事長は、フォーラム終了後にAIIB加盟に前向きな姿勢を示したことが報道されている。圧倒的な経済力や投資でユーラシア大陸に影響力を強める中国に協力することが日本の利益になるのであれば、もちろん正しい選択だろう。しかし、二国間関係強化のために中国あるいはロシアに対抗することは決して得策ではない。

 中国とロシアも決してカザフスタンを巡る綱引きをしているわけではない。もしかすると両国はそのつもりがあるのかもしれないが、そもそもカザフスタンという国が、二大大国の思惑に左右されるほどの小国ではない。カザフスタンは国際関係や外交で存在感を放つプレーヤーであり、1つの主権国家だ。

 従って、カザフスタンが日本に何を望んでいるのか、日本とどのような関係を築きたいと思っているのか、これを見極めることが非常に重要だ。キーワードとなるのが、ナザルバエフ大統領が得意とする「バランス外交」だろう。中国やロシアとの関係強化に積極的な一方で、これらの国に依存するような関係を築こうとは決して思っていない。

 つまり、ナザルバエフにとっては中国やロシアとのカウンターバランスとなる国が必要であり、それが欧州、米国、そして日本だ。ロシアや中国とは異なる関係を築くことがカザフスタンにおける日本のプレゼンスを大きくするのであり、日本にとっても、新しいパートナーシップの確立を可能とするのだ。


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