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第2回 総合展の力 ~ドイツの展示会は何がすごい?~
- 2017/8/10
戦後70年続くハノーファーメッセ
ドイツ中央部に位置するニーダーザクセン州の州都ハノーファーは、北のハンブルクと南のミュンヘンを結ぶ縦の線と、西のケルンと東のベルリンを結ぶ横の線が交差する、交通の要衝だ。この場所に今や世界最大となった巨大展示会場が建てられたのは、1946年のことだ。州都とはいえ郊外の一都市に経済復興の目玉政策が降りてきたのは、ドイツ全体から訪れやすい地理的要件が大きかったようだ。
他の都市にならい、この会場と運営会社をハーノーファーメッセと呼びたくなるが、それは間違いでドイツメッセが正式名称だ。「これも復興政策としてつくられた歴史の名残」とドイツメッセ日本代表部の竹生学史部長は話した。
ハノーファーメッセは、この会場で毎年開催される展示会の名称で、まさに1946年に第1回が開催された。今や世界的に有名になったこの展示会は、1週間で20万人が訪れる産業機械の総合展だ。総合展と言うだけあって、会場には産業用機械に含まれるあらゆる商品が並ぶ。当然、来場者層も幅広いわけだが、この総合展という企画が、日本人には意外と掴みにくい。
フォルクスワーゲンの本社が州内のフォルクスブルクにあるものの、ハノーファーの人口は今も50万人で、周辺都市と合わせてもそれほど大きな経済圏ではない。言うまでもなく、出展者にも来場者にもハノーファーの住民はごく一部しか含まれない。集まる人たちも、ハノーファーの住民に会いに来るわけではない。
仕事の中で産業用機械に何かしら関わる人たちが、欧州全域から新しいものを探しにやって来る。そこに集まる人たちが求めるものは、まだ見ぬ新しい人や商品との出会いだ。たとえ目の前が全て焦土だったとしても、人が出会えば経済は動きだすことを、70年前のドイツのリーダーは知っていたのだ。
国際イベントニュース編集長 東島淳一郎
2009年全国賃貸住宅新聞社入社。劇団主宰者から銀行勤務を経て30歳で記者に転身。7年間の記者生活を不動産市場で過ごす。2016年9月、本紙創刊とともに現職。